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W CO2レーザ、5.5kW YAGレーザ)による溶接特性、レーザ溶接におけるアシストガスの適正化、アルミニウム合金の溶接性および欠陥防止法、電子産業におけるレーザマイクロ接合の応用例、などに関する発表が相次いだ。本セッションは聴衆の関心も高く、終始満席に近い状態であった。

 

特別セッション SS−2

高速・軽量輸送体の溶接・接合
川崎重工業(株) 松井繁朋
大阪大学接合科学研究所 松縄朗
本特別セッションは今回のシンポジウムの一つのハイライトとして計画されたものである。すなわち、環境保全、省資源、省エネルギーなどの観点から、輸送体の高速化にともなう構造物の軽量化への諸対応についての最新の技術情報を参加者に提供できることを意図して企画された。
本セッションでは6件の招待講演があり、軽量高速船の設計及び製造、自動車の軽量化技術の現状、高速鉄道車両の傾向、軽量化のためのアルミニウム合金とその先端接合技術、アルミニウム合金溶接部の変動荷重挙動、など幅広い視点からの講演があった。以下に各講演の概要を述べる。
軽量高速艇の設計及び製造について三菱重工業の末岡氏よりハイドロフォイル型とエア・クッション型の場合について、特に耐エロージョン材料による軽量・高強度の船体設計の要点と製作法について詳細な講演があった。高速客船として実用化されているハイドロフォイル型については、軽量化のため空洞を有する15−5PHステンレス鋼のフォイル及びストラットの溶接構造体が採用されている。溶接は電子ビーム溶接及び手動TlGアーク溶接がいられている。一方、TSL(テクノスーパーライナー)プロジェクトのエア・クッション型実験船については、軽量化の手段として上部構造は桁で強化したアルミパネルが採用されている。設計に当たっては3次元のFEM解析が詳細に行われ、強度評価がなされ、更に実験船に取り付けた各種モニタリング装置により設計の妥当性が実証された。
一方、川崎重工業の木曽氏は同社で製造実績のあるジェットフォイル型アルミ船及び世界最大のアルミ製高速カーフェリーの設計及び製造についての報告があった。アルミニウム合金は押し出し成型性には優れているものの、溶接性は鋼材よりも劣るため、種々の押し出し成型材を多用し、溶接部を可及的に少なくなるように設計し、溶接はMIG及びTIGで行っている。この際、屋外溶接では風及び雨に対する対策を入念に行う必要があることが強調された。最後に、アルミ製高速艇は鋼製船舶に比べてその開発歴史が短いので、今後とも設計及び溶接施工に関する産学間の基礎研究が必要であることが述べられた。
自動車の軽量化対策については、トヨタ自動車の近藤氏から現状と動向に関する報告があった。自動車における軽量化の要請は環境に放出される二酸化炭素の排出低減から来ている。すなわち、軽量化により燃料消費量を低減することが要求されている。軽量化対策は大別してボディーと車台の2種がある。ボディーについては高張力鋼の使用、テイラードブランク材の使用、ハイドロフォーミング技術によるフランジ部の削減と剛性化、レーザーシーム溶接によるボディーの剛性化、ウエルドボンド法の採用、などが検討されている。一方、車台部分はボディーに比べて板厚が厚くなるため自動車全体に占める重量が大きい。そこで、早い時期より溶接構造が採り入れられ、更にフランジ溶接から突き合わせ

 

 

 

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