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よって青年が“異議を唱える対象”としての政治・社会から目をそむけ、その帰結として始まった三無主義(無気力・無関心・無感動)が指摘された頃であった。昭和50年代はじめのインベーダーゲームを皮切りに始まった本格的テレビゲーム時代の到来によって、青年は無礼・無作法が加わった万無主義と世間で喧伝されるようになった。やがて昭和の終わりからから平成にかけて蔓延した校内暴力や家庭内暴力が世間の耳目を集め、現在は、逸脱した文化の中で生まれた少女非行やいじめの問題が、解決の道をすべての関係者が模索しつつも、解決の端緒をつかむこともままならない状況の中で、大きな社会問題となったままマスコミの好餌となっている。
一方、イマジネーションが豊かで話題性に敏感、経済的にゆとりがありプライバシーを重視する、パソコンなどの機器の扱いが上手などの特徴も指摘されている。平成8年はパソコンが本格的に普及した年であり、猫も杓子もインターネットという世相であったが、部課長クラスがマニュアルと首っぴきで悪戦苦闘しているのを横目に、新入社員がいとも簡単にパソコンを操作する場面などは、多かれ少なかれどこの会社でも見られた現象であった。パソコンは一例だが、最近の若者は総じて、趣味・趣向を中心とし、私生活優先で直接体験が不足、表層的人間関係の中で日常生活を送るといった共通項が浮かび上がるようである。
現代の青年が好むものは“3つのP”だそうである。すなわちPHS(携帯電話全般を含む)・パソコン・パチンコがそれである。ある意味では、話題性に敏感で簡易さを求め濃密な人間関係をきらい、感覚的・享楽的・刹那的という、最近の青年の特徴を最も良く表しているものではないだろうか。
現代青年の長所を示す例としてよくあげられる他の面は国際性である。「異なる文化を受け入れる頭の柔らかさ」、「自分の意見を素直に表明すること」などの点が自分の青少年時代より優れていると、親の世代は認めている(昭和63年。東京都世論調査)し、相当数の子供が「外国に旅行したい」「外国人と友達になりたい」と答えている(平成3年。文部省調査)。海外旅行は毎年国民の10人に一人が出掛けて行く時代になり、外国人の姿を見かけるのは都会だけではなくなっている。現象面で国際化が進行してはいるが、一方、それが意識面まで含めて真の国際化となっているかということは、全く別の問題である。むしろ、国際化が身近に感じられることによって、ある種の文化摩擦が起こる可能性が高くなってきたとも言える。相変わらずのブランド品信仰や、ちょっとしたきっかけで噴出する差別意識など、一心の貧困がもたらすさまざまな問題には事欠かない。
大学の近くの雀荘が10年ほど前から次々とつぶれているそうである。長い時間を他人と共有する形態の麻雀という遊びが好まれず、一人で機械と向かい合う形のパチンコ、あるいはコンピュータゲームが好まれる。その一方で、PHSやポケベルで絶えず“仲間”と連絡を取り、ゲームセンターやカラオケであてどもなく時間をつぶす。現代の青年は個人主義的な傾向が強いと言われているが、仲間を求める気持ちは決して弱いものではないと思う。各種の調査でも、最も大切にするのが友人とのつきあいであると答える若者が多いが、一方では深い付き合いは避け、相手の気持ちの奥底に踏み込まないという暗黙のルールを互いに課しているようである。
だれでも人恋しい時があり、それは昔も今も

 

 

 

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