
第4章
特別寄稿
『青年の家将来考』
青年の家将来考
国立中央青年の家所長 内田忠平
■はじめに
国立青年の家は「規律・共同・友愛及び奉仕の精神をかん差する。自立性・責任感及び実行力を身につける。相互連帯意識を高め、郷土愛、祖国愛及び国際理解の精神を培う。教養の向上・情操の純化及び体力の増強を図る《以下略》」
(注1)が教育目標に掲げられ、運営方針には「青年の希望並びに国家及び社会の要請にこたえた運営を行う。広域的な交流を図るとともに、先導的な事業や運営を行う。《以下略》」(注1)ことが方針となっている。昭和34年に国立中央青年の家が開所して以来、国立の青年の家は上記の教育目標を掲げ、確固たる運営方針のもとで社会の要請に応えてきたことは厳然たる事実である。しかし、大きく変貌した社会情勢の中で、時代の趨勢に必ずしも合致しない部分を工夫したり改善したりすることが広く求められている。
一方では青年の家に課せられた使命、期待される役割、時代の新しい要請があり、もう一方では現実の施設運営の厳しい状況がある。また、このような時期であるからこそ、積極的な事業展開の必要性を感じていることもあると思う。青年の家は、その設立以来常に時代の要請に応え、また、未来を担う青年のための施設として大きな役割を果たしてきた。それゆえ我々は「今」という時期にこそ、青年の家の将来像を真剣に考えなければならない。それは、生き残りをかけてというような近視眼的な視点ではなく、21世紀において青少年教育を担う重要な施設として、あるいは、生涯学習社会の中でその機能を十全に果たして、さまざまな要請に積極的に応えるための拠点として、また、青年が何度でも来たいと思うような、夢のある施設として、自信と自負を持って未来への展望を考えたいきたいと思う。
第15期中央教育審議会(以下、中教審)は、今後の教育のあり方について、豊かな人間性など時代を越えて変わらない価値のあるものを大切にするとともに、社会の変化に的確かつ迅速に対応する教育が必要であると述べており、いかに社会が変化しようと、自分で課題をみつけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断・行動し、よりよく問題を解決する資質や能力とともに、他人と共に協調し、他人を思いやる心や感動する心などの、豊かな人間性をバランスよくはぐくんでいくことが重要であると述べている。こうした資質や能力を中教審では「生きる力」と呼んでいる。
また、教育は、子どもたちの「自分探しの旅」を抜ける営みとも言えるとも述べている。これらの課題を一朝一夕に解決することは困難であるが、国民的課題として取り組んでいかなければならないことは自明である。“現在の青年の家”でも当然のことながら取り組んでいくべき課題であるが、今後さらなる自己変革によって生まれ変わるであろう“将来の青年の家”が、この問題を解決するための大きなる役割を果たすことを望んでやまない。
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