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地域に根ざす青少年教育施設の在り方

市民活動研修開発研究所代表 吉永宏

 

■はじめに
そのスタートから考えると明年で40周年を迎えることになる『青年の家』が公立の青少年教育施設であることは改めて指摘するまでもない。平成8年度版青少年白書(総務庁青少年対策本部)によれば、「公立青年の家」は、235施設あり、宿泊型を延べ342万2,647人、非宿泊型を延べ528万9,693人が利用したと報告されている。この利用者数を低いと見るか高いと見るかの議論は分かれようが、40年前には想像しなかった発展である。
しかし、時代と社会の推移にともなう青少年の意識と行動の変化は、「青年の家」の在り方そのものについて変更を迫っていることも事実である。そのような認識があるからこそ、本誌が「21世紀を目指した青年の家の在り方−より魅力ある施設を目指して−」を特集テーマとし、その文脈において「地域に根ざした青少年教育施設の在り方」というテーマを設定したと理解してよいであろう。
以下、これからの『青年の家の在り方』についての私見を述べる。
■質を問うのか量を求めるのか
かなり以前のことだが、民間立を含めて「青少年教育施設」の評価基準について討議したことがある。その討議は、青少年教育施設の運営管理の在り方、ひいては施設の存在の意義を評価するにあたって、「質を問うのか」「量を求めるのか」をめぐって行われた。
「量の拡大と確保こそが質を高める必須条件」と「質の向上と確立こそが存在要件」という二つの論点が討議の中心であった。その討議から発展して、青少年教育施設の「運営管理ガイドライン」「効果的運営管理指数」などの策定を試みたこともあった。たとえば、「専従指導者の定員数と施設規模・年間予算の相関研究」などである。
その後、日本経済そのものが量的拡大を目標として突き進んだこともあり、質量論争はいつのまにか消えていった。さらに時が経過して膨張経済の崩壊(バブル破綻)を迎え、スモール・イズ・ビューティフルというキャッチフレーズが持てはやされた時期もあった。そのようなこれまでの経過をふりかえると、青少年教育施設も一般社会の動向にそったもので、量的拡大期と質的向上期を経験したといえよう。
「青少年教育施設の在り方」をめぐっての量と質についての論議は、にわとりと卵に示される意見の堂々巡りと似ており、真剣に討議をたたかわしていたわけだが、論点の優劣や前後を決めることにはならなかった。
現在、一般的には量の拡大が敬遠され質の向上が歓迎される傾向が見られるが、そのことにも問題がある。それは、質の向上ということが単にスローガンにとどまっている場合が多いからである。
現時点のみならず将来を見込んだ「青年の家」の質とは何を意味するのかを建て前ではなく本

 

 

 

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