
エイズ(感染してからの症状)
平成八年二月八日放送
船員災害防止協会嘱託医
川島寛
今回はエイズウィルスに感染してから、どんな経過をたどり、どんな症状を示すかについてお話しします。
エイズウィルスは生きた細胞がないと、増殖できません。
そこで体内に侵入したエイズウィルスは、リンパ球の一種であるT−4細胞に取り付きます。
取り付くと、エイズウィルスの遺伝子は、T−4細胞の遺伝子の一部として組み込まれてしまいます。
この状態のエイズウィルスはプロウイルスと呼ばれています。
感染直後はプロウイルスの活動は極めて盛んで、エイズウィルスを大量に複製して血液中へ放出します。
血液中には大量のウィルスが存在するようになり、このために発熱や筋肉痛などが現れて、あたかも「かぜ」をひいたような状態になります。
感染してから一カ月くらいたつと、血液中に抗体が現れはじめ、その抗体は急激に増えていきます。
この抗体でエイズウィルスは処理されるために、血液中のウィルスは急速に減少して、「かぜ」の症状も収まり、大部分のブロウイルスも活動を停止します。
そして症状のない期間、つまり潜伏期間が数年から十年近くも続きます。
潜伏期間中も、一部のT−4細胞は血中へ放出し、ウィルス放出後T−4細胞は死滅しますから、T-4細胞は徐々に減少していきます。
従って抵抗力も次第に減少していき、ついには防衛体制にヒビが入って、エイズウィルスの勢力が体の防衛力に打ち勝つようになります。
すると股の付け根やその他のリンパ節が腫れてきて、三八度以上の熱が続き、ひどい寝汗や下痢が現れます。
さらに、全身がだるく体重も減ってきます。
この状態がエイズ関連症候群といわれるもので、こうなるとエイズの発症は目前に迫っています。
エイズウィルス感染者の五〇%は、七、八年後に発病
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