
脳血管疾患
平成七年三月二十三日放送
東京船員保険病院副院長
大谷麗二
脳に血液を送っている血管には、左右二対の内頸動脈と椎骨動脈があり、この左右二対の内頸動脈と椎骨動脈は頭蓋内で、何段階にも枝分かれして細くなり、脳の隅々まで血液を行き渡らせ、脳に血液から酸素や栄養素の供給を行っています。
この動脈のどこかが詰まったり、破れたりすると、その動脈から血液の供給を受けている脳の部分が障害を受けることになります。
このような状態を脳卒中といいます。
脳卒中は一度発作を起こすと、手足の麻痺などの後遺症がでやすく、その後の生活に大きな影響を及ぼします。
今回は脳血管疾患の中でも、脳卒中についてお話しします。
脳卒中は、脳内の血管が破れる「脳出血」、脳を覆っている軟膜とその上のくも膜の間に出血する「くも膜下出血」、血管が詰まる「脳梗塞」の三つに分けられます。
脳出血とは脳の中に出血するもので、その九〇%以上が高血圧性脳内出血です。
高血圧が長く続くと、脳の細い血管が壊死を起こして、その弱い部分がいつも高い圧力に刺激されていると、段々と膨らんできて、小さいこぶができます。
これが血圧が上がったりすると破れて出血をするわけです。
脳出血は、高血圧になりやすい五十〜六十歳代に多く、日中活動時に発作が起こることが多いようです。
また暖かい所から急に寒い所に出たとき、入浴の際に寒い脱衣所で裸になったとき、暖房していないトイレに入っているときなどにもよく起こります。
発病は頭痛、嘔吐に続いて半身不随の順で起こることが多く、また出血が多いと意識障害が現れます。
くも膜下出血というのは、脊髄液の満たされているくも膜くうに出血することをいいます。
頭蓋骨と腹との間には硬膜、くも膜、軟膜の三枚の膜があり、このくも膜と軟膜との間のくも膜下くうにある
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