
吐血時の措置
平成七年二月九日放送
船員災害防止協会嘱託医
川島寛
胃がムカムカして、吐き気とともに洗面所に走りよった途端、まっ白な洗面所に赤い血が飛び散って、ギクッとします。
パニックの状態が過ぎると、次は死ぬのではないかと不安と恐怖にかられます。
このとき、大切なことは冷静さを見失わないことです。
洗面所では大量に見えても、実際の吐血量はそれほどでもない、と自分に言い聞かせて、何はともあれ落ち着くことです。
吐き出した血は、水で流さないでそのままにしておきましよう。
次は衛生管理者を呼ぶことです。
この二つは、だれかが一緒にいない限り、患者自身がしなければなりません。
その後は、直ちにベッドに横になって安静に努めます。
こみ上げてくる血液は横を向いて静かに吐き出します。
吐き出した血を観察すると、いろいろな情報を与えてくれます。
血の色が鮮やかな赤色で食べ物のカスがない場合は食道からの出血が考えられ、しかも大量であれば、食道静脈瘤の破裂が疑われます。
二番目は、鮮やかな赤色でその上血の塊があれば大量出血の兆候ですから、出血性ショックの出現を警戒します。
三番目は、吐血がコーヒーの残りカスのようであれば、微量の出血が続いているか、あるいは出血が止まっている可能性があると見当をつけましょう。
喀血は、気管支や肺からの出血を咳と一緒に吐き出すため、血の中に泡を含んでいますから吐血と区分できます。
衛生管理者は、吐血は胃炎や潰瘍がほとんどであり、そのような吐血の場合では死なないことを説明して、患者を安心させましょう。
そして、冷水で「うがい」をさせます。
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