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暖房で注意したいこと

平成七年二月二日放送
海上労働科学研究所主任研究員
村山義夫
船では、数日で吹雪の海から熱帯まで経験できます。帰国すると今は冬です。
国内では、香港、ロシア、イタリア風邪といわれるインフルエンザが流行する兆しです。
かって、冬に南方から帰って来た船で乗組員の多くが風邪をひいてしまいました。
入港した日は特に冷え込んでいました。
ところが、その船では暖房をそれほど強くしていなかったために、寝ているときに寒くて、予備の毛布を取り出してかけるといった具合でした。
出港してまもなく数人が熱を出して寝込み、やや遅れて数人が風邪をおして仕事をするような状態で、船内全体がゆううつな気分になってしまいました。
このように暖房の善し悪しは乗組員の健康を左右し、船内の雰囲気を暗くしてしまいます。
本日は、船での暖房で、日頃注意しておきたいことについて、今一度振り返ってみようと思います。
人の体は、体温が三六〜三七度に保たれて全体がうまく機能するようにできています。
生きているだけで常にエネルギーを生み出すので、気温はこれより低いときが快適です。
季節的な体の慣れや極端な温度差が少ない方が良いことから、冬には二二度前後、夏には二三度前後が快適です。
この温度を、至適温度といっています。
至適温度は、基本的に最も体を使わない状態で快適な温度ですから、精神的な緊張がなかったりすると眠気をもよおしたりします。
体や頭を使う作業の時には、これより数度ほど低い方が能率が上がります。
当直などの単調な作業では、あまりポカポカするような暖房は良くありません。
至適温度からかなり離れて冷えると、人の体自体が体温を一定に保とうとするため熱の発生を盛んにし、その

 

 

 

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