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熱さと健康管理

平成六年七月十四日放送
東京船員保険病院副院長
大谷麗二
いよいよ夏本番、厳しい暑さが続く毎日ですが、船内で活躍中の皆さんには、炎天下での作業や高温で湿度の高い蒸し暑い部屋での作業は、さぞかし厳しいことと思います。
日々の健康管理も大変でしょう。
ところで、炎天下での作業中に、また蒸し暑い部屋の中で作業をしていると突然筋肉のけいれんや腹痛、頭痛、めまい、失神発作などが起こることがあります。
このように、炎天下や高温多湿の環境下で起こる身体の異常を熱中毒といいます。
本日は、熱中毒についてお話しすることにしましょう。
熱中毒には比較的危険性の低い熱けいれんや熱疲労、また致命的な経過をたどる危険性のある熱射病などがあります。
それではまず、熱けいれんから説明しましょう。
ボイラー室のような高温で湿度の高い環境下で作業をしていて、多量の汗をかいたときに、水分だけを補給していると、体内の塩分が不足してきて血液中のナトリウムが減ってきます。
血液中のナトリウム量が減ってくると、筋肉内の疲労物質が増えてきて筋肉がけいれんを起こします。
これを熱けいれんといいますが、発熱はみられません。
筋肉のけいれんの他に腹痛、頭痛、めまい、嘔吐などの症状もみられます。
また皮膚は蒼白となり発汗がみられ、血圧も低下し、脈拍も早くなります。
治療法としては、水分と塩分を補給させることです。
そして涼しい均所に移し、五〇〇mlの水に食塩五gを加えたものを飲ませるか、市販のスポーツドリンクを飲ませます。
どうしても経口による摂取が不可能な場合は、生理食塩液五〇〇〜一、○○〇mlを点滴することです。

 

 

 

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