
衛生編
肝炎
平成六年四月十四日放送
東京船員保険病院副院長
大谷麗二
肝臓は体の中に食べ物として取り入れた栄養素を体に役に立つ形につくりかえたり、貯蔵したり、また、体内に入り込んだ有毒物を分解して無害にする解毒の働きや、消化液である胆汁の分泌と排泄など、人間が生きていく上で重要な働きをしており、まさしく「体内の化学工場」であり、「肝心かなめ」の臓器です。
このように人間が生きていくために、黙々と休みなく働き続ける肝蔵は、少々の障害があってもなかなか自覚症状がないため、「沈黙の臓器」といれています。
ところで、わが国では最近、肝臓病が「二十一世紀の国民病」といわれるほど増加しており、肝硬変、肝臓ガン、劇症肝炎など肝臓病による死亡は、年間約四万人ぐらいあります。
先ほどもお話をしたように肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、たとえ障害があっても、なかなか症状が現われず、相当病気が重くなって初めて自覚症状が現われることが多いのです。
従って、症状が出てからでは、特に慢性の肝臓病の場合、治療が手遅れになってしまいます。
最近の医学の進歩により、この沈黙の臓器から、いろいろの情報を得ることができるようになったため、早期治療も可能になりました。
しかし、それにはどうしても皆さんが積極的に健康診断を受けるように心がけ、自覚症状が現われないうちに肝臓病を発見する必要があります。
また一方では、肝炎ウイルスの正体が突き止められ、その結果、肝炎の予防も可能となってきました。
肝障病を少しでも減少させるには、皆さんが日頃から肝臓病の予防に対する正しい知識を持つことが大切です。
わが国では肝臓病の八〇パーセントはウイルス性肝炎によるものであり、残りの大部分はアルコール性と言われています、
そして肝硬変や肝臓ガンの九〇パーセント以上は、肝
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