
転落・墜落事故の防止
平成八年三月十四日放送
三菱鉱石輪送?船舶部次長
上野俊雄
転落・墜落事故防止ということを考える前に、船内における船員災害について考えてみたいと思います。
一般に船員災害が発生すると、その被災船員と、その家族は多大な被害を受け、時にはその人生計画が大きく狂うことも考えられ、特に死亡事故の場合は、いかなるものをもってしてもこれを償うことはできません。
また、船舶所有者は、被災船員の療養責、傷病手当、障害手当、交代のための費用、家族又は遺族の旅費、補償金、見舞金、通信費、代理店費用などの出費を余儀なくされるばかりでなく、難航、臨時寄港、停泊時間の延長などを要することもあり、営業的損失を蒙ることも考えられ、経済的損失は極めて大きくなることも考えられます。
特に近年、船舶の大型化、三国間輪送の拡大などによる遠隔地への寄港、船員報調の高額化に伴い、その損失も高額化することとなります。
このように船内における災害は本人は言うまでもなく、その家族さらに船舶所有者に多大な不利益を与えることを念頭におき、その発生の防止に努めることが重要だと思います。
次に、船員災害の発生の防止に努めるためにどのようなことを考慮し、また実行すべきかについて考えてみたいと思います。
それには船内にはどのような危険が存在するかを認識しておく必要があり、その危険に対する認識と予防が必要です。
船内における危険は種々存在しますが、転落・墜落事故防止に的を絞って考えてみると、次のような危険があると考えられます。
高所作業については、マスト、デリック・ダビット・クレーン関係、ハッチ関係、ホールド関係、ハウス周り関係、機関各所、バラストタンクなど舷外作業については、
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