日本財団 図書館


 

みんなで考える船員災害事例

 

平成七年六月八日放送
北海道運輸局船員部先任船員労務官
長谷川聖一

 

北海道の漁船を取り巻く環境は年々厳しくなってきています。
相次ぐ国際的漁業規制から、年々漁場が狭められ、減船も行われてきました。
それとともに、漁獲量の減少や輸入魚の増加によって魚価が安値となり、そのため無理な操業を行う傾向にあります。
このことが船員災害の発生原因の一つと考えられます。
北海道においても、漁船員の災害は依然として多く、死亡などの重大災害は、後を絶ちません。
私たち船員労務官の仕事の一つに、船員災害の防止を図ることがありますが、そこで今日は、北海道の沖合底曳網漁船で、漁獲物選別作業中に発生した死亡災害を紹介して、どこに原因があったのか、また、再発防止策は何かを考えてみたいと思います。
本船は一二五トン型、二層甲板の沖合底曳網漁船です。
船長以下十七人が乗り組み、操業時の作業は、五人一組の三班体制で、一組は甲板上で網入れを行い、残りの二組は船倉内で漁獲物の選別作業にあたり、これを一組ごとに交代して行っています。
当日、六回目の網入れ作業を終わり、甲板員である被災者は、食堂で他の四人と食事を取っていました。
被災者は、食事も終わり休息をしていたところ、蔵の船倉内では、前回の漁獲物の選別作業と、魚箱の積込みが終わっていないのを見て、ベルトコンベアーで送られてくる漁獲物を選別している他の班の船員の後ろに、魚箱を積む作業を手伝いはじめました。
この作業というのは、船倉内の下から、空の魚箱を上げ、選別した漁獲物を入れるために、船倉内の両舷に積み上げることです。
被災者が手伝った左舷側は、間もなく終わりましたが、まだ右舷側に積み上げる作業を、他の班の船員が行っていました。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION