日本財団 図書館


 

いか釣漁船の災害防止

 

平成七年三月十六日放送
正壽水産?代表取締役社長
柳谷慎吾

 

イカ釣り漁船特有のリスクはなにかと考えてみれば、荒天時のシーアンカー投揚作業、集魚灯の電球の破損、取替え作業、操業中のイカ受け台での作業などが挙げられます。
また逆に他の漁船と比べてリスクが少ないと思われるのは海中転落です。
イカ釣り機械が両弦に並び、航行中にあってはイカ受け台を立てているので塀をめぐらした状態になり、隙間を捜すのに苦労する形になるからです。
従って実際の災害発生もリスクの高低に比例しているものと思い込みがちですが、意外にもその逆の結果が出ております。
全国一のイカ釣り漁業基地、八戸地区における海難を除く死亡、行方不明災害事例の約四分の三が海中転落災害となっており、その半分以上が前に述べたイカ釣り漁船特有と思われるリスク以外の災害となっております。
このリスクの高低と実際の発生の乖離を考えてみますと、まずイカ釣り漁船固有のリスクと考えられる災害の発生率の低さについてですが、これは経験的回避対策に、不断の災害防止啓蒙活動が相乗しているよい結果であると思われます。
次に、海中転落災害の発生率の高さについてですが、これは前に述べた災害発生率の低さが、相対的に海中転落災害の発生率を押し上げているのと同時に、海上に浮かんでいる舶に乗船しているリスクが、直接災害に結び付いている悪い結果と考えられます。
係船中の飲食後の帰船時や、甲板上からの用足し時の海中転落事故などが続発しており、災害対策上盲点となりやすい「気持ちのゆるみ」が海中転落事故に直結していると思います。
一方、八戸の災害発生状況をみると、昭和五十九年以降災害発生率が急増しており、その後、漸減してはいますが依然として高率で推移しております。
これは大型イカ釣り漁船の海外操業の長期化と時期が

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION