
みんなで考える船員災害事例
平成六年十一月十七日放送
九州運輸局長崎海運支局
船員労務官
帆足孝介
私たち船員労務官は、通常の船舶監査や訪船活動のほかに、船員災害が発生した場合に災害発生時の監査を行うことがあります。
この監査の目的は、その災害の原因となった危険な状態や行動を発見し、同種の災害の再発を防止すること、そして船舶所有者や乗組員の船員災害防止意識の向上を目的としています。
今回は昨年長崎海運支局で実施した監査のうち、東シナ海において操業中の漁船で発生した、ロープの切断による船員死亡災書を取り上げ、監査によって明らかにされたその発生状況・原因・再発防止対策などについてお話ししたいと思います。
災害が発生したのは、二隻が一組になって東シナ海で操業に従事している以西底曳網漁船です。
被災者の乗船するA丸と僚船B丸が、操業を始めて約一力月後の午後七時半頃でした。
この漁法は二隻一組で網を曳くので、網を入れる前に曳網ロープを僚船に受け渡す作業があります。
災害は、そのロープの受け渡しの最中に発生しました。
A丸は、B丸から曳網ロープを受け取るために、レット投げによりロープを受け取り、それをメインローラーで巻き取る作業を開始しました。
ロープは太さの違う三種類のものを編み込んでつなぎ、最後のロープと曳網ロープはシャックルでつながれたものです。
作業を開始してまもなく、シャックルがB丸のワイヤーにひっかかり、ロープが緊張したためA丸は右舷側、B丸は左舷側に傾き、緊張しきったロープが切断しA丸の甲板上で作業をしていた甲板員Kさんを直撃、Kさんは頸椎を骨折し死亡しました。
災害が発生した直接の原因は、「送り出しているロープのシャックルがB丸のワイヤーにひっかかり、船体の動揺でロープが負荷に耐えられず切断した」ということ
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