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安全編

中高年齢船員と災害

 

平成六年四月二十一日放送
海上労働科学研究所研究員
加藤和彦
わが国の労働人口の商船化は急速に進み、その速度は欧米諸国の三〜四倍に相当することから、高齢化の激しさが指摘されています。
特に海上産業では、不況時に若年船員の採用を抑制してきたことと、若者の海上産業離れが相俟って、その傾向は他の産業より著しいものがあります。
また、中高年齢船員の災害発生件数は、全体の八割以上を占めるに至ってます。
これら中高年齢者の労働災害の防止と健康管理を考える場合、まず年齢を重ねる毎に生ずる身体諸機能の変化、いわゆる加齢現象について知っておかなければなりません。
人は加齢とともに人格が円熟し、行動も慎重になり、しかも豊かな経験を生かして良い仕事を安全に遂行するようになります。
しかし全国的な統計をみると、年齢層が高くなるにつれて災害発生率が高くなっていくという現象が見受けられます。
それにはさまざまな要因が考えられますが、身体の加齢現象が一因であることは間違いありません。
加齢現家はさまざまな臓器や器官に現れますが、その中でも労働能力と関係が深く、またよく知られているものとして聴力の損失があります。
聴力は十歳くらいがピークで、五十五〜六十歳くらいになると一般的に老人性難聴がみられるようになり、特に高周波域での聴力損失が大きくなります。
また、視力についても、やはり十二歳くらいがピークで、加齢とともに水晶体の弾力性減退による調節力の減少、つまり老眼や暗順応力の減少などがみられるようになります。
さらに精神神経系機能の加齢現象についても多くのことがわかっています。
まず、同時に多くの情報を受入れ順序よく処理したり、新しい情報を過去の経験に適合させることが困難に

 

 

 

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