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第4章政策系学部のカリキュラムを考える
1.政策系学部の登場
今の学生は幸せだなと、つくづく思う。今回、最近相次いで設置された政策系学部のカリキュラムを初めて詳細に検討する機会を得て、「学生が羨ましい」と思わざるを得なかった。いきなり個人的な感想から話を始めてしまったが、恐らく私が受験生の身だったら、間違いなく政策系学部を志願していたに違いない。
私の大学時代は20年も昔にさかのぼる。通っていたのは、都内某大学の政治経済学部であった。何しろ当時は、一般教育科目を何単位以上履修しなければならないといった規定が厳然としてあって、最先端の政治学を学ぼうとして入ったものの、1年次は一般教育科目と外国語と体育のみ。外国語は典型的な文法と文学の購読で、ある政策系学部のパンフレットにあった「使えない語学はやめよう」という言葉とは全く逆の世界であった。一般教育科目の大半は、高校の授業内容とたいして変わらないレベルのただ眠いだけの講義であった。2年次からやっと専門科目がスタートしたが、期待していた現代政治学(当時は「行動論的政治学」という懐かしい言葉があった)が学べたのは、ごく一部の講義のみで、とにかく政治史と政治思想史、公法関係の講義がやたらに多かった。そのうえ、卒業には162単位の履修が義務づけられていたから、全く関心のない科目も多く履修しなければならなかった。逆に学びたい科目はほとんどない状況だった。
私の学部在籍中に埼玉大学大学院に政策科学研究科、筑波大学大学院に経営・政策科学研究科が設置された。計量政治学と政策決定論を勉強したくて、埼玉大学大学院の先生に個人的に教えを乞いに行ったのを懐かしく思う(蛇足だが、同じゼミの先輩で私と2人で埼玉大学に行った方が、現在では慶応義塾大学総合政策学部の助教授になっている)。時代の流れは確実に変わりつつあったが、私の在籍していた学部はそんな時代の趨勢とは全く無関係の閉鎖された空間の中にあった。K.アローやA.セン、D.プラックらの社会的選択論に関心をもったが、所属する政治学科はおろか経済学科にも「公共選択論」の講義すらなく、やむなく原書を購入して独習する羽目になうた。政策科学関係の科目などありはしない。一般教養の社会学に満足できず、もっと専門的に社会学理論を学ぼうとしたが、当然学部の専門科目には社会学はない。以上の話は、今から20年近くも前のことだが、
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