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第1章 行政学・政策科学教育の背景

1. 行政学・政策科学の授業科目展開

わが国の行政学は、特に戦後各大学の法学部を中心に講義科目(主に政治学関係科目のひとつとして)に含まれていくようになり、その後徐々にその新たな展開がなされつつあるところである(西尾勝「わが国の行政学教科書の考察」日本行政学会編『行政学における教育と研修』ぎょうせい、1991年参照)。特に近年は、組織、制度、管理の側面のみではなく、日本の行政、政策形成・実施過程、地方自治の領域への比重も高まりつつある、その一端は、日本行政学会企画年報委員会による行政学教育の実態アンケート調査の中の「行政学の講義内容」においても窺い知ることができよう(表1参照)。総合順位(「言及」順と「試験」順との総合)の10位以内に、4位「政策決定過程」、6位「地方自治・地方行政」、7位「日本の中央行政」があがっているのである。こうした変化もあって、さらに時代状況の変化に対応して、行政に関連する講義科目との関係では次の4点(行政領域の各論化、地方白治領域の発展、政策科学領域の発展、コンピュータ・リテラシー教育の基盤化)が指摘できよう。これら4点は有機的に連結しているので明確に区分できない講義科目も学際的傾向が進行すればするほど増加するかもしれないが、傾向として便宜上このように区分することとする。
(1)行政領域の各論化・個別化
高齢化杜会への状況変化の影響、国内外における環境問題への関心の高まりの影響など新たな杜会状況への対応課題の高まりもあって、例えば福祉行政(政策)論とか環境行政論といった特定行政分野が独立した講義科目へと派生するケースである。日本の政策類型分野ごとの研究の興隆など、日本の行政活動が学問の領域に取り組まれ本格的な日本行政研究が始まっている状況と符合するものである。この点からすれば、状況変化に対応して、大学の講義科目においては、一面では行政領域の各論化が進行しつつあるのである。各論化といってもそこに参入する学問領域は行政学だけではなく、法律学、経済学、杜会学など多彩であり、さらには後述する政策科学とも密接な関係におかれることとなる。この点からすれば、学際的な行政領域の各論化と言った方が正確かもしれない。また、行政学自

 

 

 

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