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第十八回日本剣道少年団研修会(体験・実践発表会)

最優秀者作品

期日 平成八年二月十八日(日)
場所 日本青年会館

 

「剣先を通して見えたもの」

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兵庫県明石市
あけぼの少年剣友会
小学六年生
光本弘之
僕の父は、僕が生まれるずっと前に事故で左手の指を失ってしまいました。僕が生まれた時、父は「事故で指を失ってしまったけどこの子が十本もプレゼントしてくれたよ。」と言って大変喜んでくれたそうです。
そして今、僕は、この手で竹刀をにぎり、剣道を続けています。
僕が剣道を始めたのは、両親共に武道としての剣道に興味があり、特に父は左手さえ、不自由でなければ、自分自身剣道をしてみたいと考えていた事や、母も「男の子が生まれたら剣道をさせたい。」と思っていたこともあり、その影響で習い始めたのです。
初めて道場に行ったのは、幼稚園を卒園した時で父に手を引かれて行ったのを覚えています。僕が習い初めて父も竹刀を買い、それからは家で一緒に素振りをするようになりました。このころは、父の方が一生懸命だったと思います。
習い初めて一年たち二年たち僕の剣道もだんだんとそれらしくなりましたが、稽古も厳しいものになってきました。
小手は打たれて真っ赤にはれあがり、足の裏の皮も何度もむけて、立ってはいられないほどになり、家に帰ってはよく泣いたものでした。
三年生の終わりころからは、稽古も一段と厳しさを増し、先生にかかっていく度に、何度もこかされ、思いきり打たれ悔しくて、泣きながらかかっていったものでした。
このころの稽古が僕にとって一番辛い時期でしたが、打ちのめされてフラフラの僕をいつも先生はぐっと抱きとめて、「よく頑張った。」と言ってくれ、この一言で何とか続けられたのだと思います。
辛い稽古にも耐え、五年生の時には、念願のレギュラーの座を射止めました。
そんな時、僕にとって一生忘れられない出来事が起こったのです。
僕の不注意か竹刀のせいか分かりませんが一年先輩で友達の

 

 

 

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