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スペインの製造業は、一般に中小企業が多く、技術水準も欧米先進国に比べて未だ低い状態にある。また、資金力も弱いので、EC加盟前までは高関税、その他の輸入規制などによる保護のもとに成長を遂げてきた。
従業員1万人以上の企業は、サービス部門を含めて20社程度に過ぎず、さらに大企業INS(国家産業公社)の傘下に多い。
INS(Instituto Nacional de Industria)は国家持株会社で、経済復興を国家指導の下に行なうことを目的に1941年に設立された。
現在、基幹産業の保護・育成、重要産業の大規模投資に対する資金供与、原燃料の確保など、基幹産業からサービス・情報産業部門に至るまで多業種にわたる企業を傘下におさめている。
INSが直接、間接に50%以上の株式を保有する企業は約200社に達しており、主要産品に占めるINS傘下企業のシェア(88年)は、アルミ(100%)、石炭(54%)、造船(49%)、窒素肥料(38%)、鉄鋼(28%)、電力(13%)などであり、87年の工業部門GDPの7.4%、輸出総額の6.3%を占めるなど、スペイン経済における地位は極めて高い。
INSは現在、電子工業、航空機、化学肥料、化学などの成長の見込める分野に重点を置き、造船、鉄鋼、石炭などの部門の再編成・合理化、新技術の導入や国際化を目的とする外国企業との合弁企業の設立などに努力している。
スペインの主要産業は、自動車、造船、化学、鉄鋼、食品、繊維、衣料・皮革製品などであり、これらはEC諸国と比較しても可成りの規模と競争力をもっているが、造船、鉄鋼、繊維などの部門では80年代に入ってから合理化が進められている。また、86年以降、経済の好調を反映して、事務機器・コンピューター、電子・電気機械、金属製品などの部門の伸びが目立っている。
自動車部門は、輸出総額の20%近くを占め、スペインの重要な輸出産業となっているが、その生産を行なっている主要自動車メーカーは全て外資系企業である。
スペイン産業の国際競争力強化のため、政府は造船、鉄鋼、自動車、家電、化学肥料の5部門を中心に雇用の削減、買収・合併、専門化、補助金支給などを行なっている。また、中小企業の国際競争力強化のために、情報の提供、国際間の協力関
 
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