空中線には、種々の構造のものがあり、それらをすべて記述するのは困難である。ここでは、GMDSS機器とそれに関連する装置に使用されている主なもののみを述べるものとする。
図8・5に示すように、全体の長さが1/2波長(λ / 2)の導体の棒を半分に切って、その中心に高周波信号を給電した空中線を半波長ダイポール空中線と呼び、基本的な空中線の一つである。この空中線は、先端では電流はゼロで、中央の給電点に最も大きい電流分布を持っている。逆に電圧分布は給電点ではゼロで、両端が最も大きい。空中線への入カインピーダンスは約75Ω(73.13)である。空中線を大地に対して水平に置いたものを水平ダイポール空中線、大地に対して垂直に置いたものを垂直ダイポール空中線という。垂直ダイポール空中線は、VHF無線電話装置などの短波帯に多く使用されている。(図8・10参照)
この空中線は高周波信号がよく共振するので、効率の良い空中線ということができる。指向性は棒と直角方向で最も感度が大きく、棒の方向にはないドーナッツ状になる。また、このような空中線は必ずしもその長さはλ/2でなくてもよいが、その場合には特性も変化する。