物質を細かく分けていくと、その物質の性質を示す最小のもの、すなわち分子になる。この分子を更に細かく見ると、原子の集まったものであることが分かる。原子は (+)の電荷を持った陽子と電荷を持たない中性子を含む原子核と、その周囲を回っている(−)の電荷を持った電子から構成されている*。原子は陽子、中性子、電子の数の相違によって分類されそれぞれ性質が異なる。例えば原子核中の陽子が1個で、電子が1個の原子は水素であり、陽子が8個、中性子が8個、電子が8個の原子は酸素である。原子の種類が異なっても、原子を構成する陽子、中性子、電子はそれぞれ同じ性質のものであり、電子の持っている (−)電荷と、陽子の持っている (+)電荷は中和して、原子それ自体は電気的に中性である。
図4・2に原子構造の例を示した。電子は原子核を中心とした一定の円軌道を回っていて、この軌道を内側から第1、第2、…第n軌道とすると、各軌道に入り得る最大の電子数は 2n2である。すなわち内側から2、8、18、32……とり、電子はこれらの軌道を内側から順次埋めていく。図中の原子核の上にある+6、+14、+32の数字は原子核中に含まれる陽子の数を示しており、各軌道を回っている電子の数と等しいことから原子自体としては電気的に中性であることが分かる。
原子核に近い、すなわち内部の軌道にある電子は原子核に強く引きつけられて原子核から離れることはできないが、最も外側にある電子(これを価電子と呼んでいる。)は原子核との結びつきがあまり強くなく、熱、光電界などのエネルギーが加わると、原子核との結びつきから離れて物質中を移動し始める。このことから導体と絶縁物とを比較すると、銀や銅などの導体の価電子は原子