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5.5.3 リサイクル型分散エネルギーシステム
自己組織化するハイパーサイクルを応用して、自己発展するエネルギーシステムを考案してみよう。ハイパーサイクルが成り立つ条件から次のような分散エネルギーシステムの集合体を考えることができる。
? 各要素システムは太陽エネルギーによって独自にエネルギーを生産することができる。
? 各要素は、共通したエネルギー通貨を持つ。
? エネルギーは、必要に応じて要素内に蓄積される。
? 各要素システムは、エネルギー通貨の流れによって連結されている。
? 各要素はエネルギーの流れを最大化するように振舞う。
? システムは環境とあらゆる物質あるいは情報の相互作用を持ち、環境が許す範囲で状態を自己選択できる。
このような、独自のエネルギー生産システムと消費メカニズムを持つ各要素システムは、実際にある規模以上にある生態系に見ることができる。生態系は成熟するにつれて生態系全体のバイオマスの生産量を増加させる一方で、個々の植物の一次生産量を減らしていく。系全体としてはエネルギー流通量が増えても、要素レベルでのエネルギー消費効率は高まる。このことは、リサイクルシステムが自らのエネルギー経済を改善することを学ぶ仕組みがあることを意味している(ヤンツ,1980)。
ひるがえって人類の産業社会を見てみよう。エネルギーは化石エネルギーを消費し、放出する二酸化炭素は地中にもどることはない。近年ではCO2の利用の研究が進められるようになったが、石油の消費量は圧倒的なスケールで増大しており、これをまかなうめどは立っていない。廃棄物については、資源の回収とその再利用の方法は徐々に行われるようになってきた。しかし、エネルギーのリサイクルは完全に考慮外と言っても差し支えない。現在の電気エネルギーは一方向的な給電とその利用の一方向システムである。分散的なエネルギーの生産と消費のサイクルが、階層的なハイパーサイクルを形成するようにな札ば、生態で行われるように系全体での成長とエネルギー効率の改善が行えるようになる(図5−18)。

 

 

 

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