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4.4.3 生体分子の自己集積
(1) 生体膜の動的構造
細胞は、すべての生物の構造および機能の単位である。細胞の顕微鏡写真を見たことがある人はだれでも、細胞にはいろいろな膜状の構造を持った単位があることに印象づけられる。たとえば、細胞の一番外側には細胞膜がある。細胞内には小さな器官(オルガネラ)があり、やはり膜によって仕切られている。DNAを保持している核自体も膜によって保護されている。このような細胞の膜状構造体を総称して生体膜という。
生体膜はきわめて類似した構造を持つ。電子顕微鏡観察を行うと黒−白−黒(電子密度の高−低−高)の三層構造をしている。その厚さも8nm前後でほぼ同じである。これら膜状構造に共通した組立て原理があることが予想される。実際に、膜は脂質という細長い分子からできており、疎水部を内側にした脂質二分子層の構造を持っている(Tauford,1978)。
生体膜には、脂質の他にタンパク質も同量存在する。生体膜にあるタンパク質は膜結合タンパク質と呼ばれる。図4−27に示すように膜結合タンパク質には、膜の一方にのみ顔を出すものから貫通型のものまであり膜を自由に移動し、酵素反応と空間的な結合を引き起こす。膜貫通型で重要なタンパク質は、イオンチャンネルであり、細長い鎖状のタンパク質が膜内に取り込まれ、脂質分子の介在によってらせん状に固定化されていると考えられる。
(2) 学ぶべき生命の機能
? 自己組み立て(Self-assembling)原理
親水基と疎水基を持つ分子(水と油になじむことから両親媒性分子とも呼ばれる)は、互いに自発的に集合し合い膜状、棒状あるいは小胞状の構造体を形成する性質を示す。このような特性は、特に自己集積あるいは自己組み立て(Self-assembling)と呼ばれている。図4−28に示すようにこのメカニズムを使って水面上に単分子層膜あるいはスリットの間に人工膜を形成し、触媒特性あるいは輸送特性などが研究されている(Ghadiriら,1994)。
? エントロピー力場
生体高分子は、そのサイズが数nmから数μmにも及ぶ。このような大小様々な粒子が液体中に共存する場合、特定の引力関係がなくても粒子の配列化が生じることが知られている。
図4−29に示したように大きな粒子の周囲には、小さい粒子が近づけない反発力の作用する領域がある(ハッチ部分)。大きい粒子が互いに近づくと小さい粒子が入り込む余分なスペースが生まれ、結果として小さい粒子の乱雑が増し「エントロピーが全体として増加」する。熱力学の法則によれば系のエントロピー

 

 

 

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