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する。この時、A+EがTと類似した(相補的な)立体構造を持てば、T自身が触媒となり図4−25のような反応が進行する(Famulockら,1992)。

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図4−25 自己相補性による分子複製

? 立体配座の違いによる反応制御
タンパク質や核酸は、分子の内部で近いポテンシャルエネルギーを持ついくつかの安定な立体構造を実現することができる。この3次元構造は立体配座(コンフォメーション,Conformation)と呼ばれる。図4−24に示すように、立体配座をコントロールすることによって反応は立体選択性が高まり、酵素作用のon−off制御を実現することができる。
? ハイパーサイクル
マンフレート・アイゲンは、生命の化学進化におけるタンパク質および核酸の共同的な作業を説明する天才的とも言えるモデルを提出した(Eigen and Schuster,1977,1978)。十分複雑なタンパク質分子とポリヌクレオチドが形成されると、これら2つの分子種は数多くのステップで相互に作用し合う。この段階をアイゲンは、「自己再生産触媒的ハイパーサイクル」と名付けた。図4−26に示すように、ポリヌクレオチド(Ii)は、自己触媒的自己再生産によりIiを増殖すると同時にひとつ前のポリペプチド(タンパク質)の触媒作用を利用して次にできるポリペブチド(Ei)の合成に関与する。こうした二重機能がハイパーサイクルと呼ばれる理由であり、それぞれのサイクルは情報を担い伝達する機能を持つことになる。アイゲンによると閉じたハイパーサイクルは、自己複製の誤りを極小にする機能もあり、遺伝の厳密さを証明するモデルともなっている。

 

 

 

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