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第2章 21世紀のエネルギー問題

2.1 太陽エネルギーの利用

21世紀は「環境の世紀」と言われ、現在の「石油漬けの文明社会」から「環境共住型文明社会」に移行すると予測される。この様な環境重視の文明社会を構築するためには、クリーンで安全なエネルギーの開発普及が不可欠である。そこで今後人類が安心して大量に使えるクリーンエネルギー源として期待されているのが太陽エネルギーである(大田,1993;三菱総合研究所,1996)。
太陽エネルギーの利用は古く、紀元前から行なわれてきたが、現状の形に近い太陽熱温水器など実用的な利用が始められたのは1930年代からである。また、結晶型太陽電池が発明されたのは1954年であり、太陽エネルギーの利用は古くて新しい課題である。
わが国では1940年代に太陽熱温水器の利用が始まり、1958年にはソーラーハウスが建設され、1960年頃最初の太陽熱ブームが起こったが、本格的・組織的な太陽エネルギー利用技術の研究開発は1974年にスタートしたサンシャイン計画により始められた。
この様に太陽エネルギーの研究開発は世界的には1973年の石油危機以後、石油に代るエネルギーの一つとして、エネルギー源の多様化を図るために始められた。しかし最近では地球環境にやさしいクリーンエネルギーとして、世界各国が太陽エネルギーの利用を積極的に進めている。

 

2.2 研究の現状

太陽エネルギー利用には大別して、熱的利用と光的利用の分野がある。その各々の分野に間接的利用と直接的利用があるが、最近世界各国で積極的に研究開発を進めている分野(テーマ)は直接的利用の分野が多い。
2.2.1 太陽熱の直接的利用分野
太陽エネルギーを直接熱としてとらえ、熱エネルギーとして利用する分野であり、温度領域の低い技術から高い技術へと研究開発が進められてきた。
1) 太陽熱暖房・給湯;最も低い温度(40〜60℃)での太陽熱温水器は既に普及段階にあり、わが国では4,603台以上利用されている。(60〜100℃)程度のアクティブソーラーシステムも普及段階にあり、わが国では403件程度、米国では1,003件以上普及している。また、最近集熱器などを使わないパッシブソーラーシステムが世界的に急速に普及している。例えば、わが国で一戸あたり10?の南側窓より取り込む太陽熱は、暖房の必要な冬期だけで石油換算2,300万kl(わが国の総石油消費量の約7%)に相当することからもその重要性がうかがえる。

 

 

 

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