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第3章 国際協議への対応のあり方

単一市場を分け合う世界の造船業においては、各国が協調して健全な市場を維持していく必要がある。健全な市場、すなわち、適度な需給バランスを維持するためには、需要量及び供給力の現状評価及び将来予測について各国が共通の認識を持つことが不可欠であり、現在、供給力に関する各国の共通認識を醸成するための基礎となる各予測機関(各国造船工業会等)の予測・評価方法の調和作業が行われている。
97年3月に開催されたOECD造船部会において、韓国造船工業会(KSA)は、建造コスト、信頼性及び為替・金利変動により決まる価格競争力と世界の需要量によって各国の建造シェアが決定され、これにより当該国の生産量が決定されるとしており、建造可能な総量ではなく生産量を供給力として位置づけ、これを検討すべきと主張している。しかしながら、生産量の検討は、世界の需給バランスの維持に関する議論に結びつくものではなく、建造可能量としての供給力に関する共通認識が必要であるという従来からの日欧の主張と対立するものである。
本調査において、現在の供給力の評価方法は、現状の設備、労働投入量及び労働生産性に基づいて供給力関数を決定し、この関数を用いて供給力を評価するという新しい方法を採っている。この関数には、経済学上一般的に用いられるコブダクラス型の関数を用いており、現在まで供給力の評価の際に一般的に用いられていた標準船型積み上げ方式とは異なり、経済理論に基づく新しいアプローチとなっている。これにより、従来は不可能であった労働投入量の変化による供給力の変動等の解析を行うことが可能となっている。
また、この方法は、標準船型積み上げ方式と比較して、客観的に決定されるデータのみを用いている点、生産実績のない新設ヤードの供給力を生産設備と労働投入量から評価できる点に特徴がある。
さらに、本調査の方法は他国にも適用可能であると考えられ、世界各国とも同じ方法で供給力を客観的に評価することが可能になると期待される。
一方、本調査において、将来の供給力の予測方法は、労働生産性の向上の影響を組み込んだ供給力関数から算出する方法を採っている。従来の標準船型積み上げ方式による将来予測では、単純な労働生産性の向上の影響しか考慮することが出来なかったが、本調査の方法では労働生産性の向上に加えて労働投入量の変化、生産設備の変動(ドック面積の変化)等も関連をとりつつ考慮することが可能と

 

 

 

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