5.3.4 主機関運転データの全体把握分析システムの問題点と開発課題
主機関運転データの全体把握分析のための技術レベルについては、前記の3つの分析技術と同じような新しい技術の導入を必要とするものではなく、既往の技術レベルの導入で対応が可能と判断されるが、問題点は以下のとおりである。
(1)問題点
「主機関運転データの全体把握分析システム」は当機関分析システムの根幹となる「燃焼状態の把握分析」「ピストン・シリンダライナ摺動部の状態把握分析」および「クランク軸等回転部分の状態把握分析」の分析結果と従来の温度、圧力等のモニタリング情報とを続合して、5.2.4に記述した、主機関運転データの全体把握分析システムの機能と結び付け、いかに乗組員に分かりやすく、実時間で情報を伝達するかである。
また、海難審判庁の統計にもあるように機関部乗組員は高年齢者が多いことから、高年齢者にも分かりやすい表示方法が必要と思われる。(4.2.4.3海難審判庁統計を参照)そのような観点から問題と思われるものを以下に示す。
?機関関係の全体を統合するため、情報量が多く、記憶ディスクの容量を最適なものにする必要がある。
??の情報量の多さに加え、過去の故障データの照合、乗組員に分かりやすい表現とするために写真・イラスト・アニメーションのグラフィック処理等の処理が多い。そのため演算処理能力の最適なコンピュータが必要と思われる。
?推論には多くのデータベース・診断ロジックが必要なため、処理に多くの時間かかる。実用的な計算速度が必要なため、演算処理能力の最適なコンピュータが必要である。
?価格、操作性、保守性を勘案し、汎用のパーソナルコンピュータの利用が妥当と思われる。
?故障箇所の診断には、エキスパートシステム、ファジ技術が利用されるが、推論された故障部位は一つに集約されない場合がある。
診断された結果には数値で可能性を示す方法が必要である。
?故障データベースのメンテナンスでは、乗組員の手を煩わせない自動メンテナンス方式の採用が必要。
?プロペラ系、発電機系等の他のモニタリングシステムと簡単にネットワークが組め、情報交換ができること。
(2)開発課題
?診断、予知の推論には、因果関係を判定する基準の設定と実用的な速度でもって判定を可能とする推論技術を開発する必要がある。
?乗組員に分かりやすい表現方法の検討。
?単に故障箇所を表示するのではなく、応急運転、修理のガイダンス等の保守に関する情報の表示の検討。
?診断結果の根拠が明白であること。根拠の分かりやすい説明方法。
?全く新しい故障が発生した場合、自動的にデータベースに故障の内容、各センサの情報等の追加蓄積ができること。 前ページ 目次へ 次ページ
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