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4.3 内航船の機関分析システムに関する現状調査のまとめ

内航船業界は船員不足と高齢化への対応、船内労働力の確保、船員労働環境の改善、安全運航技術の維持確立のために「近代化」を推進している。そのような状況下にあって、機関プラントの安全な運転と適切な保守を可能とする「機関分析システム」が必要であり、期待されていることがアンケートならびにヒアリング調査の結果から読み取ることができる。
機関分析システムの分析対象について、船主は主機関運転データの全体を把握できるものとする中で、特に「燃焼状態の把握分析」「ピストン・シリンダライナ摺動部の状態把握分析」「クランク軸等回転部分の状態把握分析」に集約することができる。このことは重大事故例や海難審判庁の海難事故統計からも妥当であると思われる。
採用を仮定した機関分析システムの船主評価基準は、費用対効果・信頼性・操作性にプライオリティがあり、価格はその次となっている。
その具体的な価格帯は概略200トン船では300万円、500トン船では500万円、1,000トン船では1,000万円レベルをイメージしていることが分かった。
他方、機関分析システムメーカの現状における開発状況によると診断機能および予知機能を有し、船主ニーズに合った内航船向けの実用的な機関分析システムは普及レベルに至ってないといえる。
各研究機関、大学等にあっても、機関分析システムに関連する研究成果が数多く発表されているが、今後実用化に向けた技術開発、実証を経て機関分析システムに生かされることになると思われる。
機関分析システムは公的機関においてもその位置付けが重要なものとなっている。
船舶整備公団にあっては、機関分析システムの導入を推奨し支援措置が図られている。
(財)日本海事協会にあっては「予防保全管理方式」(機関分析システムと主旨が合致する)を導入する船舶について、外国籍船であるが、プロペラ軸の抜き出し検査間隔の延長を可能とする鋼船規則の一部改正を実施した。現在、日本国籍船に対しても適用できるように作業中である。
以上の調査の結果から、船主二一ズにあった機関分析システムの開発はその普及を促進するものと思われる。本年度の調査結果を踏まえ、内航船を取り巻く状況に合致した機関分析システムを開発することは社会的にも意義が大きい。船舶運航者、機関分析システムメーカ、研究機関等が一体となった継続的な研究開発が期待される。

 

 

 

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