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『こうもり』 音楽とストーリー

註:「」はセリフ、『』は歌詞

第一幕

1874年12月31日、大晦日の昼下り。ここはウィーン近郊の湯治場、バーデンにある別荘の客間。別荘の主、ウィーンの新興ブルジョアジー、資産家のカブリエール・フォン・アイゼンシュタインは、年末年始を別荘で過ごすため、妻ロザリンデと小間使のアデーレを連れて滞在中。
奥の庭から甘い恋の歌M?@−A「いとしい小鳩ちゃん」が聞こえてくる。歌っているのは、4年前ロザリンデにふられた音楽の先生、アルフレート。『はやくおいで憧れの君』−しかしアルフレートのセレナーデは昼下りの空にむなしく消える。
アデーレが、妹のイーダから届いた手紙を手に現れ、オーケストラの奏でる“舞踏会のワルツ”の誘惑にかられ、手紙を読む。“アデーレの手紙の歌”M?@−B「しがない小間使」。バレリーナのイーダは、今夜、ロシアの貴族オルロフスキー公爵が催すパーティヘ、アデーレも来るよう誘っているのだ。抜け出せるはずもないアデーレが『小鳩みたいに気ままに飛べれば』とむなしくソファに坐り込めば、再びアルフレートの歌声。アデーレはうっとり聞き入るが、『憧れの君』がロザリンデと判ると足早に去り、家から抜け出す手段を考える。
歌声を聞きつけたロザリンデが急ぎ出、慌てておまじないの薬を飲む。「お水を…」とアデーレを呼べば、水差しとコップを持ったアデーレが大泣きで現れ、「たった一人の叔母が重い病気」と今夜のお暇を願い出るが、「今夜だけは絶対駄目。主人が刑務所へ行くのよ」とロザリンデ。バーデンの町役場の役人を罵り、ひっぱたいたアイゼンシュタインに、5日間の禁固刑の判決が下ったのだった。M?@−C「しがない小間使」の“チグハグ”「二重唱」の後、アデーレは泣いて去り、ため息をつくロザリンデ。その間に忍び込んだアルフレートが、デュヴァンに臥せっているロザリンデを見つけ、歌いながら傍らに寄る。夢うつつに歌うロザリンデは「アルフレート」と囁き、目をあげれば、何と目の前にアルフレートの顔。夢から覚めて慌てて追い出そうとするロザリンデに、「ご主人が刑務所へ行ったら、また来ていいだろう」と無理やり約束させ、アルフレートは高らかに歌いながら去る。ロザリンデはアルフレートのテノールに弱い。と、アイゼンシュタインが顧問弁護士のフリントと怒鳴り合いながら帰ってくる。M?A「誰のせいだ!」。アイゼンシュタインが『お前がドジなまねばかりするから、まとまる話もまとまらない』と怒鳴りつければ『とんでもない』と懸命に抗弁、見るに見かねたロザリンデが『今日はこれでお帰りになった方が』と仲裁に入っての「三重唱」。フリントは怒りのあまり帽子を忘れて去る。ロザリンデが『5日の間我慢すれば全て片づくわ』と意気消沈のアイゼンシュタインを慰めれば、『5日じゃない8日だ!ヤツのせいさ』。忘れた帽子を取りに戻ったブリントは、今度はロザリンデにまで罵られたあげく、アイゼンシュタインに叩き出される。「みんなあいつのせいなんだ」と興奮す

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