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ごあいさつ

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一つのヤマを越えて

「長い間、お待たせいたしました」という感じの『こうもり』。日本オペレッタ協会が真正面から取り組んでの公演となりました。私も「どうして『こうもり』をやらないのだろう」といつも思っていましたが、寺崎裕則さんの「怖さをいやというほど知っているから…」という言葉に合点がゆきました。『こうもり』は完壁な歌と踊りと芸が求められている奥の深いオペレッタだからです。それなりに今度の『こうもり』には大きな期待を寄せています。
私が13年前にロンドンのコベントガーデンで見たとき、第二幕、宴会の場でオルロフスキーの招いたお客さんの中に日本大使がいました。彼が「あの日本大使はいい人だ。ドーモアリガトウ」というと、ファルケ博士が、「あの大使はアメリカの大使館の一員です」。オルロフスキー「そんなことどうでもいい」。このやりとりを聞き、当時の日米関係をヨーロッパの人々はどう見ているか垣間見たような気がして驚いたものです。
このオルロフスキーの役を木月京子さんがいかに演ずるかということに関心があります。この役はいわば第二幕の主役で、そのよしあしは『こうもり』全体に影響してきます。普通、オルロフスキーはギスギスした神経質そうなロシアの亡命貴族ですが、芸達者で貫禄のある木月さんのことです。新しいオルロフスキーを演ずることでしょう。
ともあれ今度の『こうもり』で日本オペレッタ協会は一つのヤマを越えたと思います。楽しいオペレッタはまだまだ沢山ございます。これからもみんなの力を合わせて盛り上げてゆきましょう。

 

表紙Photo:佐藤明『ウィーン幻想』より
カット:1874年、Die Bombe誌に掲載された『こうもり』のカリカチュア
(Verlag Kremayr&Scheriau,Wien:DAS WALZER一BUCH)

 

 

 

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