
3.日本側参加者の所感
(1)報告「第1回『汎アジア・コロキュアム』に参加して」 アジア諸国から尊敬されない戦後の日本 田久保忠衛 第2期「21世紀セミナー」メンバー 日本国際フォーラム理事・政策委員 杏林大学社会科学部長 何しろ日本とマレイシアとではかなりの温度差があるというので、着ていくものに苦慮した。コートは脱いで、厚ぼったいシャツを着用に及んだ。ところが、クアラルンプールの空港に着くや南方特有のムンムンする暑さだ。汗が身体中ににじみ出ているのがわかる。 空港に比較的に近いところにあるホテルに着いたら、すぐシャワーを浴びてビールでも一杯と思っていたら、ロビーで先着の人々が市内のレセプションに出発するところだという。そのままネクタイを首に巻き付けて合流した。たまたま隣席にいたのがガザリ元マレイシア外相だった。日本風に言えば、いわゆる大ボスとでもいうのであろうか。 あたりかまわず大声で自分の主張をぶちまくり、周囲の人々はただ同調するだけだ。オーストラリア、シンガポール、フィリピンの代表が座っていたが、眼中になく傍若無人ぶりを発揮していた。 そのうち、こちらにとばっちりが来て、「経済大国の日本はマネーカード・ディプロマシーしかできないのか。カネ以外の外交のカードは一体何なのか」「EAECに入るよう、折角マハティール首相が声を掛けているのに、日本は重い腰を一向に上げようとしないが、これに反対している米国の顔色をどこまでうかがわなければいけないのか」「台湾海峡問題を日本はどう考えているのか知らないが、あれは所詮内政問題だから、われわれは口出ししないで傍観している」「アジアの安定は日本と中国が手を握り、白人の米国を放り出すことだ」など言いたい放題だ。 こちらが名刺を出して自己紹介をしても、相手は名刺をくれないので、最初は誰だかわからず、戸惑った。いちいち勘にさわることをいうので、反論だけはしておいたが、正直にいって愉快ではなかった。それにしても、マレイシアの人々は日本に好感を持っているほどではないにしても、不快感は抱いていないだろうと考えていたので、正直いってびっくりした。あとで、元外相の肩書のあるマレイシアの有力者だと聞いて、ちょっと考え込んでしまった。それよりも何よりも、一昨年当地を訪れた村山首相がマハティール首相と会った際に、戦前の謝罪をしたところ、マハティール氏は「50年前に起きたことを謝り続けることは理解できない。過去は教訓とすべきだが、現在からさらに将
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