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「娘たち 父ちゃんと旅しよう」

埼玉県 地方公務員 51歳 新部満
今年の夏は、こんな旅をしてみたいと父ちゃんは思っているんだ。行く先は北海道だ。小字生の君達が楽しめる旅にしよう。
少々お高いけど、父ちゃんのあこがれのブルートレイン北斗星で出発だ。夕暮れの関東平野を眺めながら赤いスタンドの並ぶ北斗星レストランで食事するのは素敵だと思うなあ。
ロングレールの上を滑るように走るから北斗星のベッドでの寝心地はベリーグーだとおもうよ。青函トンネルに入る頃君達を起こすよ。父ちゃんも青函トンネルを通過するのは初めてだからしっかり起きるつもりだ。
こんなふうに旅を始めたい。

 

北海道は広いから(地図を見ると東北6県を合わせたより広いんだ)その旅では何箇所かにポイントを絞って見たいと思う。
最北の地稚内あたりが第1ポイントだ。稚内港から船に乗り礼文島に向かおう。天気が良ければ水平線のあたりにぼこぼこと陸地が見える。そこは、樺太だ。日本からみえる唯一の外国なんだ。(あれ、もしかして沖縄の最南端の島から台湾が見えるのかなあ?)
稚内を出港した連絡船からは利尻岳が見える。利尻富士とよばれるだけあって長く裾野を広げているみごとな山だ。父ちゃんは機会があったら1度は登りたい山なんだ。船は利尻に寄港し礼文島を目指す。
礼文島では1日かけて島の最北端から南端まで探検ハイキングしよう。浜辺では、ここにしか無い穴あき貝が採れる。別の浜辺では、ヒスイを見つけることが出来るかもしれないから楽しみにね。礼文島には高い山がないからアップダウンがあっても探検ハイキングには最適だ。ここは又、高山植物の宝庫です。エーデルワイスの仲間の“レブンウスユキソウ”は是非見つけたいと思うので一緒にさがそう。お花畑向こうは利礼海峡が広がり洋上に利尻富士がみごとに望むことが出来る。夏の礼文島は夢の島だ。

 

次の重点ポイントは摩周湖だ。稚内からレンタカーでいくつかのポイントをめぐりながら行こう。稚内公園では南極観測で活躍した樺太犬の銅像や、終戦のとき樺太からの悲しい別れの叫びの記念の碑を見ようと思う。
宗谷岬に立ってみよう。ここが日本最北端の地だ……と。そしてあの「宗谷岬」の歌を一緒に歌おう。
オホーツク海に沿って進もう。ハマナスの咲く浜辺で北キツネを見かけたら少し休憩しウオッチングしよう。
浜頓別に入る前にクッチャロ湖の北端の隣にある小さな沼で“エゾコウホネ”を見よう黄色い可憐な花だよ。
網走港では鮭が水揚げされている頃だから行って鮭をつかんで見よう。大きくて、重くて驚くかもね。
浜小清水では“道産子”を見よう。父ちゃんが時々テレビでみる馬と比べると、小さな馬だけど可愛いい目をした馬だよ。きっと気に入ると思うな。少し乗馬させてもらおう。

 

この道東には大きな湖が沢山あるけれど、摩周湖へゆこうとおもう。摩周湖原野の真中にユースホステルがあるので、ここに泊めてもらい、翌日は、摩周湖まで日の出ハイキングをしよう。まだ暗い夜空には満点の星がまたたいている。ミルキーウエーを見ることができるよ。宮沢賢治の“銀河鉄道の夜”でジョバンニがあれば星だったかなと思うのだけれど答えることが出来なかったね。英語ではミルクをこぼして出来た道と形容している。日本では、天の川呼んでいる。似ている形容だね。ずうっと見ていると、流れ星が沢山見られるだろう。さあ、星を見ながら摩周湖まで行こう。すばらしい夜明けを心に焼き付けよう。

 

次のポイントは、然別湖だ。静かな湖のたたずまいは、きっと君達も気に入ることだろう。周囲の北海道らしい樹木を抱いた山と湖とがマッチしたその風景をスケッチしようか。父ちゃんは昔、スケッチしたけどモノにならなかったので再アタックしてみようと思う。
湖の南側の山は白雲山というんだ。湖を左回りに歩いてここに登って見よう。またまた素敵な出会いが待っているんだ。ガレ場(崩れた岩が重なりあっている斜面)で待っているとキーと言う鳴き声が聞こえる。“鳴きうきぎ”だ。君達の握りこぶしほどの大きさなんだ。これでもうさぎなんだ。とってもかわいいから、動物好きの君達は離れられなくなるところだろう。
山を下ると熊笹に囲まれた丸い美しい湖が目に飛び込んで来る。北海道の3大秘湖の東雲湖だ。ライトブルーのその美しさは、宝石のようでいつまでも君達の心に残ることだろう……。

 

父ちゃんは、こんなふうに旅をしたいと思っている。さあ父ちゃんと旅しよう。

 

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「幌馬車に乗って」

東京都 主婦 35歳 片渕千恵
私には車に極端に酔いやすい八才の長男とすぐ「おなかすいた。」を連発する六才の次男、ろくに歩かず、どこででも寝てしまう四才の女の子がいます。車で移動しようとしても、子供たちが「吐きそう」「おなかすいた」「おしっこ」を連発するため、ただでさえ運転の下手な私はそれらに対処できず、パニックになってしまいます。また電車を使おうとしても子供がいると着替えや、お昼寝の毛布など、ほんの少しの旅行でも大荷物。下の子が眠りでもしたらどうにもなりません。あ〜あ、独身時代、リュックを担いでユースホステルを泊り歩いた、あの楽しい日々はもう無理なのかしら…。ダメ息まじりに目の前に現れるのは若い頃に行った中国内家古の大草原。そこを馬車に乗ってポコポコとハイキングした楽しい思い出…。
そう、馬車に乗ってのんびりハイキングできないものかしら。幌をつければ少々の雨でも平気だし、荷物も積めるし、下の子が眠ってしまったってそのまま寝かせておける。きっと馬の蹄鉄の心地良い音とリズミカルな馬車の揺れはステキな夢を提供してくれる。特に観光するわけでもなく、景色の良いところをただ行くだけ。オプションでポニーをつけてもらって、上の子は馬車の横をポニーにまたがって並んで歩く。夜はランプをつけて、馬と一締にごはんを食べて、馬車の中か、その下で眠る。
北海道の広いラベンダー畑の中なんか行けたら最高だろうなあ。でも近場で、南房のフラワーラインや、富士の裾野、なんだったら奥多摩湖にむかって多摩川沿いをゆくのでもいい。
個人ではとても無理だけれど、インストラクターの方について頂き、一泊くらいでそういうツアーはないものかしら。
子供が「おなかすいた」といえばオニギリを渡し、「眠い」といえば毛布をかけてあげ、鳥をみつけたら双眼鏡と図鑑を出して調べる。それらが全部、移動しながら出来る。RV車では得られない、きっとステキなアウトドアツアーになると思うのですがどうでしょうか。

 

 

 

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