1. 緒言
近年、地球環境問題が大きくクローズアップされてきており、これと密接に関連するエネルギー問題とあわせ、その解決に向けて各分野で真剣に取り組んでいくことが求められています。
船舶技術の分野においても、省エネルギー技術、代替エネルギー技術、NOx・SOx等の排気ガス対策技術等、長期的展望のもとに幅広い技術の確立を目指して研究開発を展開していくことが期待されております。
このような社会的背景のもとに、平成5年12月1日に開催された運輸技術審議会において。諮問第18号「新時代を担う舶用技術開発のあり方について」に対する答申がなされ、その中で、トータルクリーンシップ計画の一環として新形式舶用電気推進システム、すなわち、燃料電池を利用した電気推進システムの開発が提案されました。この答申を受けて平成6年8月より、(社)日本造船研究協会内部に、この研究に関わる特別委員会、調査研究部会および研究開発室が設けられました。
燃料電池は、発電効率が高く、環境特性(低騒音、低振動、排気ガス特性等)が優れており、保守・自動化が容易であると期待されるため、現在、陸上発電所用やオンサイト用の試験研究が活発に実施されているところです。本研究では、このような特性を持つ燃耕電池を船舶の電気推進装置の電源として利用するために必要な事項を明らかにすることを目的として実施されました。
このため、平成6年度から8年度までの3年間にわたって、要素研究、要素実験を実働しました。また総合評価実験を実施し、燃料供給系の動特性の評価と負荷変動対策の効果の備認を行い、当初の目的を達成しました。
2. 研究開発の概要と成果
2.1 研究の目的および目標性能
本研究では、燃料電池推進船を実現するのに必要な要件を明らかにする目的で、対象とする船舶を想定し、以下の主要な目標性能を設定して研究を行いました。
想定船
船種 499型内航貨物船相当
燃料電池の出力 1000kw(500kw×2系統)
燃料電池の種類 固体高分子型(PEFC)
燃料の種類 メタノール
主要な目標性能
効率
発電システム HHV:45%以上(LHV:50%以上)(発電端)
推進システム HHV:40%以上(LHV:45%以上)(推進軸端)
排気ガス NOx 10ppm以下、SOx〜0ppm、HC〜0ppm
負荷変動性能
在来船並
負荷変動中の改質ガスCO濃度:100ppm以下
容積・重量(機関室) 在来船並
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