4.3 シミュレーション計算を用いた満載状態の推定法
数学モデルを用いたシミュレーション計算によって操縦性能を検討する場合に、現在入手可能なデータを利用して、出来るだけ高精度で推定を行うことを念頭に置き、バラスト状態あるいはヘビーバラスト状態の性能を基に満載状態の性能を推定する方法について検討を行った。
具体的には、数学モデルに用いられる船体・プロペラ・舵の相互干渉を表す干渉係数を載荷状態の違いによる性能の相違の影響要素と考え、すなわち数学モデルで扱われる整流係数γと直進運動時の船位置での伴流係数ωROをこれらが本来表している性格の他に種々の干渉影響を含ませた新しい干渉係数として取り扱い、新たにγE、ωROEと定義し、載荷状態の変化がこれらの係数に及ぼす影響について検討を行った。
検討の結果を、図4.3.1に示す。図より喫水の変化やトリムの変化に対してγEやωROEも変化することが分かる。これらの変化の割合が通常の船型をした船に関しては、ほぼ同じように対応できるものと仮定すると、バラスト状態における実船試験データに基づいてシミュレーション計算を行って求めたγEとωROEを基に図4.3.1に示した喫水やトリムの変化に対応する変化率を適用することにより、載荷状態の変化に応じたγE及びωROEの値の相関関係が求められる。このようにして推定したγE、ωROEの値および載荷状態に応じた船体流体力を用いてシミュレーション計算を行うことにより、満載状態の操縦性能を推定することが出来る。
このようにして求めたγE及びωROEの値の関係を用いてバラスト状態の実船試験結果から満載状態の操縦性能を推定した例を図4.3.2に示す。結果は、10°/10°Zig−Zag試験での2nd Overshoot Angleに実船試験結果と推定値で差が見られるものの、その他はほぼ精度良く推定されており、本方法が満載状態での運航性能を評価する上で有効な方法である事が分かる。
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