日本財団 図書館


 

6成果の活用

我国造船業のかかえる第1の問題は、国際競争力の維持・強化であり、これを達成するための課題として、
1)船舶のハイパフォーマンス化
2)設計・開発研究の高効率化
3)先端技術対応と新規需要創出
などがある。
いずれの課題達成にも船舶海洋流体力学の果たすべき役割は大であり、とりわけ、高度先端技術であるCFD技術はそのキーテクノロジーとして位置付けられてきた。CFDは数値流体力学という学問であり、これを基礎とて開発した技術の要素は他の目的の技術の要素として容易に利用できるからその応用範囲は極めて大である。
本SR「大型肥大船船尾流場推定法の高度化」は従来達成し得なかった肥大船の船尾粘性流場の解明に挑戦し、新しい船型計画法として使用できる各種流場推定法を開発した。残された更なる高度化のための課題は種々あるが、設計の現場で計算実績を増やし地道に保守、改良を加えて行くことが必要である。
即時利用可能な活用法から短期、中期研究への活用法について以下に述べる。
1)即時活用:設計における「流場解析的船型計画法」のツールとして:
所与の設計条件下で性能の良い安全な船型をニーズに応じていかに効率良く設計するかという日常的設計から新規需要創出を目指した船型開発まで、従来から模型試験中心の船型計画法が行われてきた。この方法は時間と費用がかかるだけでなく、特別な計測をしない限り、ある船型(原因)に対して抵抗値(積分量・結果)が得られるだけで、どこが改良のポイントなのか判然とせず、設計のための情報量が極めて少なかった。
一方、本SRで開発した船体周囲流場(基礎/造波/自航時粘性流場)推定法を有効に活用すれば、肥大船の船体抵抗の90%以上を占める粘性抵抗や造波、プロペラとの相互作用を説明するメカニズムが短時間に効率良く高精度で推定できるだけではない。

 

042-1.gif

船型(原因)から抵抗(結果)へのプロセスの途中で、周囲流場という(因果関係を握る豊富なデータ)を短時間で、しかもパラメトリックに条件を変えて計算でき、設計指針に必要な物理量を好む形に変換して即時にCG表示できるため、「船体のどこが、どのような抵抗を増加させているのか?、またその改良のポイントは何か?」などの設計者が欲しい情報を短時間で把握する事が可能となる。これと設計者の経験的知見を総合すれば、本推定法は、船舶設計における新しい流体力掌設計システムのツールと

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION