図5.3.2.1 船体表面格子とプロペラパネル
図5.3.2.2 船尾と舵まわりの格子
5.3.3 流暢推定法構築・評価
(1)流場推定法構築
NICEコードとWISDAMコードを用いた自航時粘性流場推定法を使用して「SR196A/日/C船型」、「龍光丸」、「だいおう」の3船型についての計算を行った。
NICEコードによる「龍光丸」の曳航時と自航時(プロペラ作動時)の伴流分布の比較を計測値と合わせて図5.3.3.1に示す。プロペラ作動の吸引作用により流れや縦渦が船体中心面の方に縮む傾向があるがS.S.1/4の断面に着目すると良く分かり、曳航時、自航時ともに、計測値と良く合っている。プロペラと舵の後流(x=O.55)では流れが舵により上下に分断されている様子が再現されている。図5−3.3.2にプロペラ作動時の船尾部の圧力分布について計算と実験の比較を示す。計算によって定性的定量的に現象が良く捉えられている。図5.3.3.3に曳航時と自航時との船体表面差圧力分布△Cpを示す。プロペラ吸い込み効果が船尾に向かって急増しているのが分かる。これを積分した量が推力減少率tに比例する量であり、自航時の伴流値とともに自航性能の評価に重要な情報量となる。
WISDAM−Vコードを用いた計算によるSR196C船型の圧力分布を、実験値と比較して図5.3.3.3に示す。若干の違いはあるが概ね良く実験値と一致している。WISDAM−VコードによるSR196C、B,C船型の推力減少係数(1−t)を実験値と比較して図5.3.3.4に示す。また有効伴流係数(1−wc)の比較を図5.3.3.5に示す。SR196船型はB,A,Cの順に船尾の肋骨線形状がV型からU型に変化している。計算による1−tはA船型が幾分大きくなっているが、B船型とC船型の定性的な関係は実験と良く一致している。また、計算値と実験値の定量的な差は、舵なしの計算値を舵有りの実験値と比較しているためで、舵なし状態についての比較を行った「だいおう」では、計算による1−tが0.795に対し実験値が0.792と、定量的にも良い一致を示している。
1−weについては計算と実験値のRn数が異なるため一概に評価できないが、B,A,C船型間の大小関係は一致しており、船型間の違いを表していることがわかる。
(2)評価
・従来、高精度計算が不可能であった船体とプロペラの相互作用の計算が可能となり、自航時粘性流場をシュミレートできるようになった。これによりプロペラ作動による船尾部の圧力変化や伴流分布の縮小が計算で捉えることができ実験と良い一致を示した。
・計算による自航要素(1−t,1−W)については船型間の比較が可能となり、流場の計算結果とともに船型改良の指針として活用できることがわかった。
・今後、計算実績を増やし、舵の取扱いやプロペラの相互作用に関係する格子密度などのパラメータスタディを行いつつ、改良を加えることにより定量的な精度も大きく向上するものと考える。
前ページ 目次へ 次ページ
|
|