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5.3 自航時粘性流場推定法

5.3.1 はじめに
通常の船は船尾にプロペラを装備して、プロペラが発生する推力により推進している。このため、プロペラは船の伴流の中で作動し、またプロペラの吸引作用により船尾周りの流れが変化するなどの流体力学的な相互作用が生じて、これが船の推進効率に大きな影響を及ぼしている。したがって、船の推進性能を推定するためには、船体単独の流暢や抵抗のみならず、プロペラを含めた自航時の船尾粘性流場についても精度の高い推定法が必要である。
ここでは、基礎粘性流場推定法をべースにしてプロペラの影響を流場の支配方程式の中に外力項として考慮した自航時の粘性流場を推定する方法について研究した。
5.3.2 数値計算法
船体まわり粘性流場計算用のNS計算スキームと、ポテンシャル流に基づくプロペラ計算法を組み合わせ、自航時粘性流場の数値計算法を構成する。
船体まわり流場用NSコードとしてNICEコードあるいはWISDAMコードを用いると、プロペラ位置における流速分布が得られる。これを計算条件として、無限翼数プロペラ理論を用いてプロペラ計算を行うと、プロペラの推力下とトルクQが、プロペラ作動円に働く単位面積あたりの推力Pxおよび回転方向の力Pθの積分値として得られる。
このPxとPθの分布を、プロペラ面位置における外力項として船体まわり洗場用NSコードに加えて再度計算すると、プロペラ影響が考慮された流場が得られる。

 

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数値計算によって、船体とプロペラ推力がつり合う自航状態に対応するプロペラ回転数の決定は、以下の手順で行う。
1)曳航状態の船体まわりの流れを計算し、得られたプロペラ面での流速分布をプロペラ流入速度分布としてプロペラ計算に入力する。
2)プロペラ計算を行い、プロペラ推力が船体周囲流場計算で求めた船体抵抗と一致するよう、プロペラ回転数を決定する。ただし、シップポイントに対応する場合は摩擦抵抗修正を考慮する。
3)2)のプロペラ計算で求めたプロペラ力Px、PθをNSコードに入力し、プロペラ影響を考慮した船体まわりの流れの計算を行う。
4)プロペラ面内流速分布を再度求め、プロペラ誘導速度を差し引いたものをプロペラ流入速度分布としてプロペラ計算に入力する。
以下、2)〜4)を、プロペラ回転数が収束するまで繰り返す。
上記の計算を行うためには、NS計算用格子とプロペラ計算用パネルとの間で、流速およびプロペラ力を補間によって受け渡す必要がある。図5.3.2.1に船体周りの格子とプロペラパネルの空間的配置例を示す。また、図5.3.2.2に、舵を考慮した計算も行った場合の船体と舵まわりの格子を示す。

 

 

 

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