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5.2 造波粘性流場推定法

5.2.1 はじめに
タンカー等の肥大船の満載状態では船速が遅く、造波抵抗や船尾流場に及ぼす波の影響は大きくないが、軽荷状態では船速も比較的速くなるので肥大船の推進性能に及ぼす波の影響が無視できなくなる。しかし、肥大船の作る波は非線形性が強く、現象が複雑で数値計算上も難しい問題があるので、厳密な取り扱いは将来の課題として、ここでは、肥大船の造波シミュレーションの基本的な数値計算法について研究し、実験結果と検証しながら課題の抽出を行った。
造波粘性流場推定法は、基礎粘性流場の推定法をべースとして、自由表面の境界条件、水面の変形に応じた計算格子の生成等について新たに機能を加えた。

 

5.2.2 数値計算法
計算には、NICE法、WISDAM法、FRESH法の3種類の計算法を使用した。自由表面を考慮した計算では、船体及び自由表面に適合した格子を用いて計算を行う。いずれの計算法においても、自由表面形状が時々刻々変化するため、格子系もそれに合わせて動く、動格子系の計算となる。WISDAM法では時間精度を持つMAC法を用いているため、時間変化が物理的意味を持つが、NICE法とFRESH法では擬似圧縮法を用いているため、物理的意味のない擬似時間変化を辿って定常解に収束する。
自由表面から離れた流体内部における動格子系の計算は、コントロールボリュームが時間的に動く影響を考慮する以外は、double modelの計算と同じである。
自由表面に接する箇所での計算では、自由表面境界条件を考慮する必要がある。自由表面境界条件は、3方向の運動量の保存則である動的条件と、ある時刻に自由表面上に存在する流体粒子は、ずっと自由表面上に留まるという運動学的条件からなる。具体的には、自由表面において圧力が大気圧と釣り合い、接線方向に応力を持たないという条件と、波高hに関する次式である。
各時間ステップにおける格子は、点をガース方向に移動させることによって、新しい自由表面形状に適合するよう、代数的に生成される。

 

030-1.gif

 

5.2.3 模型試験
造波粘性流場推定法のValidationのためのデータベースとするために、SR196C船型の4m模型船について、満載状態と軽荷状態で、自由表面波の計測を行った。模型船の航走速度は満載、軽荷状態ともに1.0m/sで、フルード数(Fn)はO.16である。波高はサーボ式波高計を計測架台の上に並べて、5?間隔の格子点上で計測した。満載状態の波高島瞰図を図5.2.3.1に示す。

 

 

 

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