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1. 緒言

 

不規則な気象・海象中を航行する船舶の船体構造には様々の波浪荷重が作用するが、この複雑な荷重に対する構造応答予測の向上が、船体構造設計の信頼性を高める上で重要なファクターとなる。
近年のコンピュータの発達にともない理論解析に基づいて、想定された海象状態において波浪中航行する船舶の船体運動、荷重、構造応答を直接計算で求めることが可能となってきたが、これらを検証、補完すべき実船計測のデータは非常に少ない。
強度評価の信頼性向上を図るためには系統立てた各種船舶の継続的実船計測により船体構造に作用する荷重およびこれに対する構造応答の実体を把握することが極めて重要な課題である。
当研究部会では運動特性、構造様式の異なる船舶について主に横、局部強度に対応する実働荷重、応力等について長期実船同時計測を実施し、データの収集、解析を行うとともに、現在設計で用いられている荷重、応力計算法との比較検証を行い、船体構造設計の信頼性向上を図ることを目的に平成4年度から7年度の4年間にわたり次の研究を実施した。
研究の第1の柱である実船計測は2隻を対象に実施し、第1船の川崎汽船株式会社所属、川崎重工業株式会社建造のコンテナ船“せとぶりっじ”(SHIP A)については、平成5〜7年度にわたって北米航路16航海分のデータを収集、第2船の第一中央汽船株式会社所属、住友重機械工業株式会社建造のパナマックスバルクキャリア“PACIFIC NOVA”(SHIP B)については、平成6、7年度にわたって7航海分のデータを収集した。計測は、波高をはじめとする海象条件、加速度、動揺角度等の船体運動、船底、船側に働く波浪変動圧およびスラミング圧、船体構造の応答応力等を対象に長期にわたって実施し貴重なデータを収集した。
計測データは本部会で開発された自動計測システムで収集し、データ解析も同様に当部会で開発された解析システムで実施した。また、解析データは別途検証を行いその妥当性を確認した。計算法の検証で重要なファクターとなる波浪に関しでは、従来の目視による観測に加え、波高計によるデータを収集し、新たに開発した方法により解析を行うとともに気象データに基づく波浪推算結果との比較も実施した。
本研究の第2の柱である荷重・応力計算法の検証ついては、SHIP A,Bの両船について現状設計で用いられているストリップ法による船体運動、波浪変動圧の長短期予測、および縦強度と横強度部材に分離した離散化法による応力応答計算を行ない、計測結果との比較検証からその差異について検討した。また、離散化手法に基づく荷重、応力の計算法とは別に相関係数法を提案し、理論計算値と実船計測値との比較検証により、その適用の可能性について検討した。さらに、ストリップ法に基づく荷重・応力計算法の改善法として、船側タンク内のバラスト水が船側波浪変動圧に及ぼす影響について検討した。
最後に実船計測と計算結果の比較検討から、現在設計で用いられているストリップ法に基づく荷重・応力計算法について今後の課題を抽出した。

 

 

 

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