
4. 成果の活用
第2章及び第3章に述べたように、本研究では多くの分野で知見が得られたので、その各々が活用されるべきであるが、ここではそれらをいくつかの項目に括って述べる。
(1) 損傷及び構造データベース
今回集めた資料は既に述べたように広範囲にわたっており、これ自体で設計の参考になるとともにばら積み貨物船の主要構造の傾向の把握にも活用できる。
(2) 保守点検と疲労強度との関係
学問的に正確なアフロ―チでは実用化にはかなりの年数がかかると考えられる状況において、耐用年数と保守点検の効果との関係を速算できる手法の一つとして本部会の提案した方法は役立つものと思われる。今後、さらにデータを追加して実用性を高めるべきと考える。
(3) 溶接作業工数推算法
実用的な手法を開発したので、これに各社の設備や工作法の相違を考慮してそれぞれの社の推算法を確立することが望まれる。
(4) 座屈許容設計法
船体構造の基本となる部材においてパネルの座屈を許容した場合の構造応答及び正確な座屈強度と最終強度を明らかにした。今後、船級協会でも実用設計法として導入の推進をはかって頂きたい。
(5) 波浪変動荷重の簡易推定法
応力の応答関数の簡易推定法を作成した。この手法をHandy size以外の船種にも適用して実績との比較を行い、疲労強度の実用的計算法の実現をはかる。
(6) CAEのための有限要素法の実用化
ズーミング計算省略及びスーパーエレメント法の活用についても、一応のめどはついたので、今後さらに対象を広げて研究すれば実用化に近づくものと思われる。
また、具体的な構造の有限要素法による設計の思想については、今回はトップサイドタンクのトランスリングを対象とした設計指針ができあがり、直ちに利用できる。このほか、二重底のたわみの簡略計算法、横隔壁基部の強度検討法、トツプサイドタンク内口ンジフレームの疲労強度検討法、クロスデッキの検討法なども参考になるものと思われる。
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