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3. 得られた成果

3.1 損傷データの調査と検討

本調査によりばら積貨物船の損傷の特徴が把握できた。また本調査資料が以降の本研究の重要な参考資料になったことは勿論、今後のばら積貨物船の船体構造の検討に際しても有効な資料になり得るものと思われる。

3.2 主要部構造データの収集と解析

代表的なばら積貨物船のデータベ一スが出来た。集められたばら積船は1993年からさかのぼる10年間に建造された船が殆どであり現時点の構造は勿論、この10年間の構造様式の変化も知ることができる。近年建造された船は合理的な構造の研究、電算機使用による解析手法の採用、高張力鋼の大幅な採用、工作の装置化等の新技術が反映されたものであり貴重なデータとなった。このデータの活用については項目ごとに詳細に整理されており、調査目的である合理的な標準構造の設定及び初期構造決定、保守点検のための資料として柔軟に利用できるものである。

3.3 ばら積貨物船の疲労損傷と保守点検に関する検討

ばら積貨物船の疲労損傷に対する検査のあり方を検討する目的で、対象部位の疲労特性や現場での亀裂検出能力などをアンケート調査で補い、現状の検査の価値や目標信頼度達成に必要な検査間隔などを検討した。また感度解析を行って、部材信頼度向上や部材の軽量化、検査の簡素化などの設計要求に対する対応策を明らかにした。得られた主な結果は次のようである。
(1) ばら積貨物船の6つの部位の疲労特性と検査能力をアンケート調査で明らかにした。
(2) 現状の検査間隔を2年と考えると、各部位の破壊確率や検出される亀裂長さ分布は、アンケートと解析でほぼ一致する。
(3) 使用中検査を全く行わなければ発生した亀裂の約90%が200mmを越えて成長し、約60%が500?を越えて成長するが、現状の検査によってこれらがそれぞれ約30%および約10%に減少していると考えられる。
(4) 望ましい目標信頼度は、200?あるいは500?を越える亀裂個数をそれぞれ、現状の1/8あるいは1/16に減らすことである。目標値を達成するには、検査間隔2年をそれぞれpf(200)については0.5年、pf(500)については1.5年に短くする必要がある。
(5) 亀裂成長パターンについては現在情報が不足している。図2.3.3の亀裂パターンの変化に対して、破壊確率は3倍程度変化する。
(6) 感度解析の結果、部材信頼度の向上、部材の軽量化あるいは検査省略に対する対応策が表2.3.1のように得られた。
本研究で行ったアンケートは専門家の主観を基にしている。また調査数や調査範囲の点で十分とはいえない。その意味で今回の調査は一つの試行であり、損傷統計と合致しない面もあると考えられる。しかしデータ収集が困難な問題に対して、アンケートによって情報を収集し信頼性解析を行ってみることも有効なことを述べておきたい。

3.4 溶接作業の作業性に関する調査

図面から溶接工数を算出する式を作成した。これを実構造に適用した結果をみると、本算出式にはブロックの形状に関する係数などの全体を調整する係数が一切含まれていないにもかかわらず各種のブロックに対してほぼ同程度の近似を与えている。このことは、影響係数の値がほぼ妥当なものであり、溶接工数に影響する因子を正しく評価していることを示すものと考えられる。各工場はそれぞれの工作設備、方法を採用して香り、これらが溶接工数に影響があることは当然で、

 

 

 

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