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2.6.3 応力の応答関数の簡易推定法
実際のばら積貨物船において船体疲労強度を詳細に検討するためには、SN線図より疲労被害度を計算する必要が生ずるため、注目している部材の応力の応答関数が必要となる。しかしながら、応力の応答関数を忠実に計算するためには莫大な量の構造計算が必要であるため、通常は応力の応答関数を完全な形で求めることは不可能に近く、また本研究でも為し得なかった。そのかわりに、ここでは変動水圧の応答関数から応力の応答関数を推定する簡易方法を提案し、この方法によって推定される応力の応答関数について考察を行った。
まず、この推定法の前提として、変動水圧の応答関数は完全な形で求められており、応力については、各出会い角ごとに1ケース(1つの波長船長比)は計算されているものとする。ある点の応力に対する水圧の影響を考えると、応力点より遠いところの圧力よりも、応力点に近いところの圧力の影響の方が大きいと考えられるので、応力点と圧力点の距離によって水圧の重み付き平均を取り、水圧の応力に対する影響係数を定義する。この影響係数は、各出会い角ごとに一つづつ定義され、波長船長比の関数となる。水圧の応答関数をもとに、これらの影響係数を計算し、これに構造解析より得られた応力値を乗ずると、応力の応答関数が推定できることになる。
3種類のばら積貨物船について、このような方法により応力の応答関数を簡易的に推定した。なお、Handy Sizeについては、構造解析をいくつかの波ケースについて行い、簡易的に推定された応力値と比較を行なった。その結果、推定された応力の応答関数は、無次元化された有効波長で整理すると、船種が異在ってもほとんど同じ形の応答関数に在ることが判明した。なお、この応力の応答関数は、船の大きさによらず、無次元化された有効波長が4〜5付近でピークを持つことがわかった。また、Handy Sizeの結果より、推定された応力の応答関数は実際に近いものであることが判明した。ただし、波との出会い角によって若干バラ付きが生ずるなど、細部については今後の更なる検討を要する。

2.7 計算による構造設計法に関する検討

2.7.1 合理的な構造計算方法の確立について
2.7.1.1 ズーミング計算を省略した簡易推定法
局部構造の静的強度や疲労強度を検証するにはコースメッシュによる全体モデルでの計算結果からさらにファインメッシュによるズーミング計算を実施しているが、多大在時間を要する。そこで、本研究は、全体モデルでの解析結果から直接局所的な応力を簡易的に推定する事を目的とした。検討例として、Handy Sizeのビルジホッパナックル部を取り出し、構造モデルとしては3タイプ(図2.6.1参照)の比較を行なった。局部曲げが予想される箇所の応力集中に影響を及ぼすパラメーターとしては、局部形状、板厚、荷重、目違い等が考えられるが、本例では目違い以外の要素は加味されている。
この結果タイプ別の応力集中比は、一定範囲(図2.6.1の(ア))構造で、2.59〜3.45に収まっていることがわかった。また、パラメーターの中で最も影響の大きい順に局部形状、荷重、板厚となる事もわかったが、問題は他の構造で適用できる汎用性を有しているかにある。これについては、本検討方法と同一の計算方法により、構造によってはパラメーターの中で目違いの項目を追加してシリーズ計算を行ない、応力集中係数を計算しておけば、公称応力はコースメッシュモデルで計算済みなので、船の大きさによらず本推定法は成立するものと思われる。
2.7.1.2 スーパーエレメント法に関する検討
従来のズーミング計算の欠点を補いかつ計算時間を短縮するための一方法としてスーパーエレメント法の利用が考えられる。スーパーエレメント法の利点は次のような点にあると言われている。
a) 部分的設計変更や複数の解析ケースに対する再計算の手間とコストを最小限に抑えられる。

 

 

 

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