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2.6 変動荷重による構造応答に関する検討

合理的な船体構造設計を行なおうとする場合、少なくとも静的強度と疲労強度について検討を行なっておく必要があるのは言うまでもない。このうち、静的強度については、強度上重要となる荷重の推定も容易であり、またそれらを用いた構造解析も多数試みられ、船体構造設計を行なう上で重要となる個所についての知見が数多く得られてきた。一方、疲労強度については、タンカーの縦通肋骨について詳細な検討がなされた例があるものの、それ以外の個所、それ以外の船についての強度検討、特に、疲労強度上重要となる荷重の特性を考慮した検討は、ほとんどなされてこなかった。
そこで、本研究では、ばら積貨物船を対象とし、疲労強度を念頭において、変動荷重による構造応答の検討を行なった。まず、代表的な3船型、Handy Size, Panamax Size, Cape Size,を取り上げ、これに作用する波浪変動圧および変動内圧の計算を行なった。次に、ばら積貨物船の疲労強度上重要となる個所の代表的例としてビルジホッパナックル部を取り上げ、波浪および内圧変動荷重に対する構造応答を計算し、この部位での応力評価を行い、構造的特性について考察した。さらに、今後の疲労強度検討に資するべく、変動荷重を用いて疲労強度評価に必要な応力応答関数を簡易に推定する方法の提案を行なった。
2.6.1 変動荷重の推定
ばら積貨物船の合理的な船体構造を探求するためには、船体に作用する荷重をより精密に推定し、それによって発生する応力を基に船体構造強度評価を行う必要がある。本章では、ばら積貨物船の船体強度のうち、主として横強度に関する疲労強度を念頭において、波浪中で船体に作用する主要な荷重の推定を行った。ばら積貨物船の横強度に関する主要な変動荷重としては、船体の外側から作用するいわゆる波浪変動圧、船倉内の積み荷やバラスト水による槽内変動圧、および船体の慣性力なとが考えられるが、ここでは、これらの変動荷重の推定法について、これまでの研究結果を整理するとともに、波浪変動圧と槽内変動圧の計算法を示した。
まず、波浪変動圧については、ストリップ法により計算された船体運動を基に、二次元境界要素法を用いて時々刻々の圧力分布形状を計算した。この計算法は、自由表面条件を瞬時瞬時の実際の波面上で満足させるようにした非線形計算法であり、船の横強度を検討する上で重要となる喫水線近傍の圧力分布をより精密に計算できるものである。一方、槽内変動圧については、まずストリップ法で槽内の各点の加速度を計算し、これを圧力に変換することによって、バラスト水、および鉱石による変動圧力を計算した。加速度による変動圧の場合、圧力の原点をどこにとるかが問題となるが、ここでばこれまでの研究結果を参考にし、上下方向加速度については船倉の頂部を原点とし、水平方向加速度については船倉の中央を原点とした。また、バラスト水による変動圧力と変動鉱石圧との違いは、その比重のみとした。
ところで、このような変動圧力は、一般に、場所ごとに異なった位相差を持つため、変動応力を厳密に計算するためには、各時刻での圧力分布を荷重として応力解析を行い、注目する部材に最大応力が発生する圧力分布を見つけなければならない。しかしながら、これには膨大な計算が必要となるため、ここでは、以下のような方法を用いた。すなわち、波浪変動圧については、波上側船側の船側波高が最も高くなった時の水圧分布から最も低くなったときの水圧分布を差し引き、これを変動圧分布とし、これによって生ずる応力値を変動応力振幅とした。一方、内圧については、応力を求めるべき注目する部位を決め、この点で圧力が最大となる時刻を計算し、その時刻での圧力分布を内圧分布として採用した。なお、このような考え方は、疲労強度においては変動応力が重要となるが、ある点の変動応力にはその点に加わる圧力の寄与が最も大きく、この点から離れたところの圧力変動は相対的に影響が小さい、と仮定するものである。このように考えれば、船体各部での圧力の同時性が考慮でき、最大値包路線のような非現実的な圧力分布を用いるということがなくなる。
試計算は、対象船を Handy Size, Panamax Size, Cape Sizeの3種類のサイズの異なるばら積貨物船として行

 

 

 

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