
一切含まれていないが、各種のブロックに対してほぼ同程度の近似を与えている。このことは、κ1以下の影響係数の値がほぼ妥当なものであり、溶接工数に影響する因子を正しく評価していることを示すものと考えられる。一方、各社工場別に結果を調べると、特定の工場で製作されたブロックは概ね大きく計算されるなどの偏りがみられた。当然ながら各工場それぞれの工作設備、方法を採用しており、溶接工数に影響があることは言うまでもないことである。したがって、誤差の主たる要因は工場間の差に依るものと考えられる。
以上のことを総合すると、本算出式は概ね妥当な計算値を与えるとの結論を得た。小さめに算定されることについては、アーク発生率(At)もしくは大組ステージ係数(κ1)を若干変えることで調整できると思われるが、前述のように工場間の影響の方がより支配的であると思われるので、項目を指摘するにとどめる。
2.4.6 まとめ
構造設計時に利用可能な溶接作業工数算出式を見いだすことを目的として、溶接作業に影響する因子の調査を行い、これらの因子が評価可能な算出式を提案した。本算出式で求めた溶接工数は、実績値とよい一致を示している。精度向上のためには、各工場ごとの修正係数等を加味することが望ましいが、本算出式に含まれる影響因子は実用上十分な計算値を与えるものとの結論を得た。
2.5 座屈許容設計法の研究
2.5.1 防撓材が防撓パネルの座屈強度に及ぼす影響
通常の設計では、パネルの座屈強度を周辺単純支持の条件を仮定して求めている。しかしながら、パネルの周辺には防撓材が配置されており、これがパネル周辺の回転変形を拘束して座屈強度が高くなることが予想される。そこで、面内圧縮荷重を受ける連続防撓パネルを対象として、防撓材の拘束影響を考慮した座屈強度算式を解析的に導いた。
2.5.2 船底外板の座屈・塑性崩壊挙動および強度の解明
船底外板は水圧と縦曲げによる船長方向の圧縮および船側に作用する水圧による船幅方向の圧縮を受ける。この船底外板の連続防撓パネルとしての座届・塑性崩壊挙動を、有限要素法による弾塑性大たわみ解析を実施してシミュレートし、水圧荷重下における2軸圧縮最終強度相関関係を導いた。そして、船級協会の与える船底板の座屈強度算式について考察を加えた。
2・5・3 船底桁の座屈・塑性崩壊挙動と強度の解明
船底桁には、一般に曲げ/剪断/圧縮の組合せ荷重が作用する。この船底桁を、ロンジ材間の内底板および船底外板パネルの半幅をウェブ上下の両側にフランジとして有する桁にモデル化し、有限要素法による弾塑性大たわみ解析を実施した。解析結果に基づき、スチフナの効果および孔の影響も含めて、船底桁が座届・塑性崩壊に至る過程を明らかにした。また、現存のばら積み貨物船に対して、設計荷重のもとでの座届発生の可能性についても検討を加えた。
2.5.4 繰り返し座屈による疲労強度の解明
パネルに弾性座屈発生を許容すると、繰り返し荷重のもとでは座届たわみが繰り返し発生し、これに伴う曲げ応力による疲労が問題となることが予想される。そこで、上甲板を模した縮小試験体を製作し、実際に座屈疲労試験を実施した。
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