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2. 研究の内容

2.1 損傷データの調査と検討

ばら積貨物船の合理的な船体構造の調査研究を行うにあたり、まずその損傷実績を調査、整理することにより船体構造上の問題点を明確にし、損傷当部に関連する構造についての今後の研究に生かすため、平成6年度の作業として損傷データの調査を行った。調査対象は過去15年間の竣工船から抽出したものとし、船種としてはばら積貨物船と類似の構造を有する数隻のチップ船、鉱石船等も含めることとした。調査の対象は次の通りである。
a) 船体構造委員会西部地区部会資料 35件
b) 船体構造委員会関西地区部会資科 4件
c) 本部会参加造船所に対するアンケート調査 36件
調査資料75件を損傷カテゴリ別に集計したものを要約の表1に示す。さらに要約の図1では竣工年が1985年以前と1986年以降の損傷件数を比較した。最大件数のカテゴリはハッチコーミングである。損傷部位はサイドコーミング端部のブラケット部が殆どであり、その主因は船体縦曲げである。
第2位スツール、第3位横隔壁は、バラスト兼用ホールドの前後に大多数の損傷が発生しており、バラストを搭載したときの載荷状態が過酷であることがわかる。また、これらは1986年以降に急増しており今後とも計画時には十分な検討が必要と思われる。
船底構造は内底板のビルジホッパのナックル部の亀裂が多く、それらが構造に悪影響を及ぼしている。船側構造の損傷には波浪変動圧による疲労が原因と思われるものがあった。
第4位船底構造から第8位船側構造言では年代による損傷件数の差は小さい。それに反し86年以降の損傷データはなかった。
今回の調査資料数が十分であるとは言えないため日本海事協会の損傷データベースの調査を行ったところ、その損傷傾向と今回の調査とは同様であることを確認した。したがって、本調査によりばら積貨物船の損傷の特徴が把握できたものと考えられる。
本調査の資料はその後の本研究にあたって重要な参考資料となった。また、今後のばら積貨物船の船体構造の検討に際しても有効な資料として利用できる。

2.2 主要部構造データの収集と解析

2.2.1 調査方法
調査研究は最近建造されたばら積貨物船のデータを収集し解析することで、合理的な標準構造の設定、及び初期構造決定、保守点検のための資料として機能を果たすべく検討した。
ばら積貨物船として現在まで建造された実績船は一般的にビルジホッパー、トップサイドタンクを有する構造様式の船がほとんどである。近年に建造されるばら積貨物船もこの構造様式の優れた点を踏まえて、多少の変化はあっても大きく変わらないものと考える。従ってばら積船特有の船体構造は貨物倉部にあり、これを主要部構造様式として捉えた。また船の大きさは12,000DWT〜150,000DWTとした。なお、船の大きさ(DWT)が同じであっても設計コンセプトを異にするものは調査の対象とした。
この主要部構造様式を対象として構造様式を記述する方法の検討を行った。主な内容は次のようなものである。
1)出来る限り記号化すること(構造部位の形状、様式も含む)。
2)構造様式・要素の相互関係を検討するに便利であること。

 

 

 

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