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15型から150型までのばら積船の構造データを調査し、設計データ集としてまとめる。このデータから各設計要素間の相関関係を調査し明らかにした。

1.3 保守点検が強度上の安全性に及ぼす影響の研究

船体の疲労信頼性は、設計時の配慮とともに使用中の検査保守によって維持されている。しかし現在行なわれている検査によって、船体に発生した亀裂のうちどの程度が発見されどの程度が見落とされているのか、船体において望まれる疲労信頼度はどのレベルか、あるいはそのレベルを達成するためにはどんな検査間隔と手法で検査すればよいのか、など信頼性評価に必要な定量的情報はほとんど把握されていない。これらの解明には、船体構造部材の疲労特性や現場での検査能力を明らかにして、検査補修の効果を組み込んだ疲労信頼性解析を行う必要がある。
そこで本研究部会ではまず、”はら積貨物船の疲労損傷と検査”に関するアンケート調査を参加造船所の技術者を対象に実施し、信頼性解析に必要な部材疲労特性や検査能力の情報を収集することにした。次に調査結果を用いて、繰返し検査を考慮した信頼性解析と感度解析を行った。そしてぱら積貨物船の疲労信頼性と合理的な構造検査のあり方を明らかにした。

1.4 溶接作業の作業性に関する調査

強度上の安全余裕は多いに越したことはないが、そのために建造コストが大幅に上昇することは避けねばならない。そこで、ある構造方式に対してコストを検討する場合に、物量以外に作業工数が関係する。船の場合には作業の大部分は鋼材の溶接作業であるので、まず図面から溶接工数を推定する手法の開発を狙って検討することとした。

1.5 座屈許容設計法の検討

TMCP鋼の出現以降、船体構造に高張力鋼が広範に用いられ、パネルの薄肉化による船体重量の軽減が進んでいる。しかしながら、現状の設計ではパネルの薄肉化は、座屈防止条件により制約を受けている。そこで、部材の重要度に応じて、パネルの弾性座届発生を許容しようと言う、「座屈許容設計」の概念が提唱されている。
座届の発生を許容した場合に強度上考慮すべさ問題として、座屈強度の正確な評価、座屈後低下する面内剛性の評価、初期降伏強度、座屈発生から最終強度までの強度余裕、繰り返し座届たわみの発生による疲労なとがある。
本研究部会では、座屈許容設計適用の可能性を検討するため、上記の項目を明らかにする目的で一連の研究を実施した。

1.6 波浪中の変動荷重による構造応答の検討

直接計算を中心とする船体構造の合理的設計法を検討するにあたって最大の問題は波浪荷重の推定である。船の一生に遭遇するすべての状態の荷重を求めることは不可能であるから、ある程度抽象化された標準荷重を用いる必要がある。標準荷重を設定する第1歩として、各サイズのばら積貨物船の種々の状態における規則波中の波浪荷重及び載荷の荷重を計算し、これを構造に加えて得られた応答から実用的な変動荷重を求める。

1.7 計算による構造設計法の検討

合理的な設計法確立のため、ルールによる設計から直接計算による設計に移行するに際しては、再現性のある計算法、計算の省力化、計算結果を用いた強度評価法、計算結果の物理的解釈などの項目の解明あるいは確立が必要である。そのために、ズーミング計算省略の可能性の検討、有限要素モデル化の手法の検討などを行うとともに、ばら積船の代表的な構造に対して詳細計算を行って強度評価の手法を探ることとする。

 

 

 

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