
ばら積貨物船の合理的な船体構造の調査研究
1. 研究の目的
ばら積貨物船は成熟した製品と言われているが、多くの研究にもかかわらず現在でも就航船の損傷があとを絶たない。また、贅肉はかなり取り去られていて、さらなる軽量化、省力化の定めには保守点検による強度の回復まで考慮した設計が必要である。しかし、現状ではこのようなきめ細かい設計をしようとする場合に適切なガイドラインがない状態である。今後、厳しい価格競争の中で成熟製品であるばら積貨物船を建造して行くためには僅かでも蓄積された技術を積み重ねてシステム化し、強度、軽量化、安全性の微妙なバランスを考えた設計法を実用化する必要がある。しかし、日常設計の現場では安全性と軽量化をどうやってtrade offするか見当がつかない場面も多い。
このような事情を勘案して、本研究ではばら積貨物船の設計に際して従来以上に細かい検討ができるようなツールの構築を目的として次の目標を定めた。
(1) 図面から作業工数の推算が可能な手段を作成すること。
(2) 構造の強度検討に役立つ保守点検法を案出すること。
(3) 従来より一段きめの細かい設計時強度検討技術を開発すること。
このために、主として前記(1)、(2)を検討するWG1と(3)を検討するWG2とを設置し、次の検討を行った。
<WG1>
a. 既存のばら積貨物船の損傷事例及び構造寸法のデータを収集したデータベースの作成
b. 疲労強度と保守点検法との関連の研究
C. 図面から溶接作業工数を推算する方法の開発
<WG2>
a. 座届許容設計法の研究
b. 波浪変動荷重による応力の簡易推定法の開発
c. CAEのための有限要素法の実用化
1) 計算の省力化
2) 具体的構造の検討思想の確立
以下に各項目の概要を述べる。
1.1 損傷事例の調査と検討
ばら積貨物船の過去から現在に至る構造の問題点を明らかにして今後の設計に反映すると共に要研究テーマを拾い出す。このために過去に発表された損傷例を収集しデータブックを作成しさらにその内容を検討する。
1.2 構造データの収集とデータベース構築
構造設計が船殻を作るに必要な情報を決定し、図面あるいはデータとして提供することにあるとすれば、情報をどのような手順で加工するかは重要であり、研究は広く行われている。つまり船体構造は標準構造パターンの集合体と考えるならば、標準構造の善し悪しは船の安全性、節労問題まで決してしまうということになる。
そこで、最近建造されたばら積貨物船のデータを収集し解析することで、合理的な標準構造の設定、及び初期構造決定、保守点検のための資料として機能を果たすべく検討した。
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