(5)縦曲げモーメント
縦曲げモーメントについては、船の長さ40mのハイブリッド型の高速船の規則波中、向かい波状態での水槽試験結果について述べる。模型は船体を長手方向に10分割して、荷重を船体中心線に通した梁(バックボーン)で受ける弾性模型船を使用した。
計測結果を図3.7〜3.10に示す、図の縦軸は、いずれもモーメントをρgBL2HAで無次元化しはている。ここで、ρは水の密度、gは重力加速度、Bは船の幅、Lは船の長さ、HAは半波高である。
図3.7は、縦曲げモーメントの船長方向分布で、サギング状態とホギング状態それぞれに分けて示している。サギング状態で船体中央部が大きく、縦曲げモーメントはサギングモーメントが支配的であることが分かる。
図3.8は、船体中央部(S.S.4 1/2)における縦曲げモーメントの応答関数を示す。
図3.9は、縦曲げモーメントの船速影響を示す。高速域では減少する傾向にあり、荷重としては必ずしも速度に比例して大きくならない。
図3.10に船首上下加速度と船体中央部での縦曲げモーメントの関係を示す。図中には、現行諸基準の縦曲げモーメントの要求値を示している、
横軸目盛り4g上の●印は、暫定基準の要求値(約1470 ton−m)を、また2g上の◎印は本基準の要求値(約1100 ton−m)を示す、加速度の定義が異なること、及び設定値も異なることから、要求値は暫定基準に比べて20%程度小さくなる。
2. 実船試験
船速27ktの中速艇の実船の計測結果の例について述べる。本実験は、高速船の荷重と構造応答を計測する目的で船速、波との出合角、波浪等の実験条件は選択して実施されている。
図3.11に船底衝撃水圧の計測位置を示す。水圧は、←→で示した船底パネルのひずみから等価水圧に換算する方法によっている。
船底水圧の最大値及び有義値(不規則な波浪中で、人間の視覚あるいは体で感ずる平均的な応答値で、統計理論的には有義値は平均値の1.56倍に相当する)について船長方向分布及び幅方向分布の計測例を発生頻度と共に、それぞれ図3.12及び3.13に示す。図中の計算値は、圧力減少係数Fgを0.6と仮定して計算した値で、新基準で計算される値とは多少異なるが、船首近傍の計測値の有義値とは、良い相関を示している、
各パネルの等価水圧と船首上下加速度の関係を図3.14〜3.17に示す。いずれも水圧計算値と良い相関があることを示している。
図3.18に船底水圧の時系列データを示す。船底の長さ方向に同時に水圧がかかっていることが分かる。
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