日本財団 図書館


 

 

2章 設計荷重

2.1 波浪衝撃荷重の発生しうる範囲

船底衝撃荷重の分布については、実験による計測結果からも船尾から船首にかけて右上がりで、特に船体中央部より船首に掛けては急激に上昇する水圧分布を示している。
衝撃水圧の発生し得る範囲については、現行の軽構造船暫定基準に従うこととした。
2.2 設計荷重
2.2.1 船底荷重
−1、 衝撃荷重を発生しうる範囲内
(1)設計荷重設定の条件
高速船艇の船底衝撃水圧は船首加速度と共に、船体運動と波浪が同調した場合に大きくなる。波浪中を高速で航行することを常とする船艇では、完成時に想定される荒れた海面を高速で航行し船体の耐波性能を確認することが行われている。これらの実績から正面向かい波、ないしは斜め向かい波で船体運動が波と同調した場合に、船体加速度、船艇衝撃水圧が最大になることが知られている。もちろん、これ以外で大きな衝撃水圧を受けることもあり得るが、通常この状態の荷重に耐えられれば、問題はない考えられている。
設計荷重の設定は許容応力との関係で論じられるべきものである。本基準においては弾性設計をべ一スにしており、対象船が運航可能な限界の状態で生じる最大荷重に対して、部材に塑性変形を生じないことを要求している。
(2)船首加速度
高・中速船の運航限度を決定する要因は、船上の人間が耐えることができる加速度の大きさ(と持続時間)であり、この限界を超えて航行することはできない。したがって、対象船の使用目的により乗員、乗客の耐えうる加速度を考慮し、これに応じて荷重を設定することはきわめて合理的であり、現実的な方法である。この考え方は、従来の軽構造船暫定基準やRR11の基準案を踏襲している。
大隅はディープV型の高・中速艇の実船計測データを整理して、フールド数(Fn)をパラメータとして波長・船長比(λ/Ls)、加速度・波高比(AP・Ls/Hw)の関係を与えている(下図2.2.1参照)。この関係から、設計加速度と船の長さが与えられると、同調時に対応する船速(2.1.10式)、波長(2.1.12式)及び波高(2.1.13式)を求めることができる。
ここで用いる加速度は、時系列データの谷から山、すなわち、peak−to−peak値の有義値(1/3最大平均値)と定義する。peak−to−peak値は船底衝撃水圧と船体加速度の関係の力学的な考察により採用された。有義値を採用したのは、実船で容易に計測でき、状態

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION