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1.2.5 船底部
高速船にあっては、一般に船底構造と船側構造で考慮すべき荷重の特性が異なるため、基準を適用する上で、船底部と船側部の境界を明確に区別しておく必要がある。また、チャインのない船舶にあっては、これらの境界が特に不明確である場合が多い。よって、チャインのない場合の取扱いを含め、本基準を適用する上での船底部と船側部の境界について定義した。
1.2.6 船底勾配
船底外板に曲率が付いている場合、同一船体横断面においても船底外板上の各点毎に接線勾配が変化する。本基準2.2.1−1.に規定する波浪衝撃荷重に関する算式は、これら各点毎に求めた接線勾配を代入することにより、各点毎に作用する波浪衝撃荷重を求めるということに対応できるが、次の?@及び?Aの理由により船底中心点と船底部上縁を結ぶ線分の傾斜を当該船体横断面の波浪衝撃荷重を求めるための船底勾配として代表させることとした。
?@船体外板の各点に詳細に荷重を算定し、それらを基に板厚、防撓材及び桁部材の寸法を細かく変化させるという設計は可能であるが、現実的にはLsが50m以下の現存高速船で船底外板、その防撓材及び桁の部材寸法を(キール板厚を除き)船の幅方向に細かく変化させている実例は殆どない。
?A汎用算式は、いたずらに算式の適用を複雑にすることなく実用的な範囲内で、できるかぎり簡易なものとすべきであると考えた。特に高速船のように細かな設計変更がしばしば繰り返される船舶に対する算式にあっては、詳細な/又は最終的な設計仕様(例えば、船体線図等)が決定される前においても概ねの構造寸法を算定できる算式とすることが望ましいと考えた。
また、本基準2.2.1−1。に規定する船底に作用する波浪衝撃荷重を求める算式は、船底勾配(β)が小さくなればなる程大きな要求値を示す。理論式としてこの傾向は正しいものであるが、実船(実績)寸法との比較検討結果では、船底勾配(β)が特に小さい箇所(βが約10°以下の場合)では、要求値に対して実船(実績)寸法が著しく不足する。これは、排水量型の船舶の場合、船底勾配の緩やかな箇所(一般的にLsの中央より後方)では、船底部全体が完全に空中に出るようなことは極めて稀であると考えられるため、当該箇所に対しては、基準で想定している衝撃荷重(空中部にある構造物に海面が衝突する場合に生じる荷重)が厳しいめの値を要求していることが原因と思われる。また、実績船舶の当該箇所には、特に損傷履歴が報告されていない。よって、本基準では、これらのことを考慮し、船底勾配(β)の下限値(10°)を設けることにより荷重値を緩和させることにした。
1.2.7 船底入射角
船底入射角についても前1.2.6に解説した考えと同様、各船体横断面に対して適用する代表の船底入射角を定めた。なお、代表の位置については、本基準2.2.1−1.の規定と整合を取り、船体中心線と船底部上縁を結ぶ線分の中間点とした。

 

 

 

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